電磁界解析ソフトウェアEMSolution

COILのインダクタンスおよび電磁力計算

概要

外部電流磁場ソース(COIL)のインダクタンスや電磁力の計算方法を紹介します。

解説

COILはメッシュに依存しないため利用しやすい機能です。軸対称の例は"COIL(外部電流磁場ソース)のインダクタンス計算"で紹介しておりますが、ここでは、3次元で磁性体を含むモデルを例に説明します。鉄芯部分をトータルポテンシャル領域、コイルと空気部分を変形ポテンシャル領域とする2ポテンシャル法(A-Ar法)と、全領域をトータルポテンシャルで解き表面定義電流ソースSDEFCOILでコイルを定義した場合(A法)を比較し、精度を検証します。

Fig.1に励磁コイルを示します。コイルは4つの矩形断面の直線部(GCE)と円弧部(ARC)からなります。インダクタンスや電磁力を求める場合、Fig.1の積分領域を積分要素GCE-、ARC-で定義します。解析は対称性を考慮し1/8領域とします。積分要素はCOILの解析領域内の部分を定義します。起磁力は3000ATとし、線形静磁場解析をします。

Fig.1 励磁コイルと積分領域

Fig.2に鉄芯(比透磁率1000)とA法で求めた磁束密度強度分布を示します。COILを用いた場合もほとんど同じ分布になります。Table 1にA法でのインダクタンス計算結果を示します。境界条件を遠方境界でBn=0とHt=0で解析してみましたが、結果はほぼ同じで、境界条件は十分と考えられます。インダクタンスの値はコイルを1ターン換算したものです。インダクタンスは、コイル領域でA・Jを積分した値を$LI$とおいて計算する方法と、全磁気エネルギー($B^2/2m_0$の全空間積分)を$LI^2/2$として求める方法がありますが、両者はよく一致しています。 EMSolutionでは$LI$の磁束量はコイルシリーズの磁束として出力されます。また、磁気エネルギーを計算するオプションも用意しています(MAGNETIC_ENERGYオプション)。

一方、A-Ar法で求めた結果をTable 2に示します。インダクタン スは内部で計算されて足しこまれているため、鉄芯を含んだコイルインダクタンスとなっています。この場合も2種の境界条件で解析していますが、結果は一致しています。また、 A法で求めた結果とも一致しています。正則化を行わない場合、ICCG法は$10^{-8}$まで収束しませんが、結果はほぼ同じでした。

Fig.2 鉄芯と磁束密度強度分布(A法)

Table 1. A法による解析とインダクタンス計算結果

境界条件未知数非ゼロ要素数ICCGCPU TimeL (H) A・J積分L (H) B×B積分
Bn=0883,92014,699,871599427.64.29417E-074.28800E-07
Ht=0900,26014,973,253431281.04.30673E-074.30062E-07
平均4.30045E-074.29431E-07

Table 2. A-Ar法による解析とインダクタンス計算結果

境界条件正規化未知数非ゼロ要素数ICCGCPU TimeL (H) A・J積分 
Brn=0×883,92014,699,871545333.14.30087E-074.2E-07で発散
Brn=0883,92014,699,871534342.34.30087E-07
Htrt=0900,26014,973,253388295.34.30590E-07

両方法での電磁力の計算結果をTable 3、4に示します。Fig.1の①、②、③各部の各方向のトータル力を示します。両方法の結果がほぼ一致していることがわかります。

Table 3. A法による電磁力計算結果

 PartFx ( N )Fy ( N )Fz ( N )
Bn=0-1.28170E-012.17279E-07-7.67471E-01
-7.38606E-03-7.38606E-03-8.16667E-01
2.17479E-07-1.28170E-01-7.67471E-01
Ht=0-1.26507E-014.01467E-07-7.68262E-01
-5.87456E-03-5.87456E-03-8.17471E-01
4.01467E-07-1.26507E-01-7.68262E-01

Table 4. A-Ar法による電磁力計算結果

 PartFx ( N )Fy ( N )Fz ( N )
Brn=0-1.26026E-010.00000E+00-7.67754E-01
-6.03243E-03-6.03243E-03-8.17493E-01
0.00000E+00-1.26026E-01-7.67754E-01
Hrt=0-1.27201E-010.00000E+00-7.68253E-01
-6.74528E-03-6.74528E-03-8.18000E-01
0.00000E+00-1.27201E-01-7.68253E-01

以上のように、SDEFCOILを使ったA法とCOILを使ったA-Ar法の結果はほぼ一致しており、等価な解析となっています。上記の計算例は、メッシュを充分に細かく取り、遠方境界も十分遠くにとっています。しかし、そのような条件でない場合は差が出てくる可能性がありますのでご注意ください。

この先は会員の方のみご覧いただけます。

既存ユーザのログイン