電磁界解析ソフトウェアEMSolution

SDEFCOILとPHICOIL

概要

EMSolutionには、電流ソースとして"表面定義電流ソース(SDEFCOIL)""ポテンシャル電流ソース(PHICOIL)"があります。 両者は機能的には良く似ており、ここでは、例題をを使い、その違いについて説明します。

解説

Fig.1のような1/4領域のモデルで、円形コイル(平均半径1.5m, 矩形断面1m)が作る磁場を解析します。 要素分割は四面体の非構造メッシュとします。 ELMCUR(内部電流ソース)による電流ソース入力方法もありますが、このような非構造メッシュの場合は使うことができません。 入力方法としては、SDEFCOILとPHICOILが考えられます。

Fig.1 解析メッシュ

まず、コイルの設定方法ですが、SDEFCOILでは、Fig.2で示す電流路を囲む4面(①、②、③、④)を面要素によって定義します。 それぞれの面要素は異なる物性番号を持ち、コイル内部を面の正の方向として、電流方向に対して右ねじ方向の順で定義します。 一方、PHICOILでは、電流流入面(⑤)を定義します。 電流流出面は反対側の対称面としており、定義の必要はありません。 全周モデルのようにコイルが閉じている場合は、ギャップ要素を併用します。

Fig.2  コイル表面メッシュ

電流分布を決める方法は、SDEFCOILでは、面①から③の間で0から1に変化するポテンシャル$φ$と面②から④で0から1に変化するポテンシャル$ψ$を与え、

$$J=I\nabla\phi×\nabla\psi$$

から電流分布を求めます。 ポテンシャル$φ$、$ψ$は面からの距離の比で幾何学的に与えます。 一方、PHICOILでは、面⑤に一定の電気ポテンシャル$φ$を与え、定常電流場問題としてポテンシャルを解き、

$$J=-\alpha\phi$$

から電流密度を計算します。 ここで、$α$はコイルの全電流が$I$になるように決めます。
実際、両者で計算してみますと、電流密度はFig.3のようになります。 SDEFCOILの場合は、ほぼ一様な電流密度(1$MA$/$m^2$)。 PHICOILの場合は、内周側で密度が高くなり、内周側と外周側の電流密度の比は内径と外径の比となります。

(a)SDEFCOIL

(b)PHICOIL

Fig.3 電流密度強度分布

コイル内の磁束密度をFig.4に示します。 PHICOILの場合にやや内側に寄っていますが、目立った違いはありません。 コイル外側の磁場はほとんど違いがないと言えます。 アスペクト比(コイル半径コイル断面幅)が非常に小さい場合を別としますと、電流の偏りによる磁場の影響は小さいと考えられます。

(a)SDEFCOIL

(b)PHICOIL

Fig.4 磁束密度強度分布

ローレンツ力より求めた電磁力密度分布をFig.5に示します。
電磁力は電流と磁場の積で決まりますので、電流密度の偏りが電磁力に現れます。
コイル内の電磁力密度分布を求めることが重要な場合には、より現実に近いSDEFCOILを用いるべきだといえます。

(a)SDEFCOIL

(b)PHICOIL

Fig.5 電磁力密度強度分布

まとめますと、使用の面では、SDFECOILの方が四面を定義する必要があり、一方、PHICOILでは電流流入面の一面だけであり、SDEFCOILの方がやや手 間が多いですが大差はありません。 PHICOILでは、コイルが曲率を持っていますと内径側に電流が寄ります。 SDEFCOILは四角断面のコイルに適用できますが、矩形でない場合は電流が偏ります。 コイルが細い(コイル断面長さがコイル周長に比べて小さい)場合には、これらの電流の偏りが問題になることは少ないと考えられます。 コイルが太く内部の電磁力分布が問題になるような場合は、電流の偏りの影響が大きく、より実際に近い電流分布を与える方を使う必要があります。

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