電磁界解析ソフトウェアEMSolution

EMSolutionの基礎4-5
節点力法

 従来、磁性体に働く電磁力を求める手法として、等価電流法、等価磁化法あるいはマクスウェルの応力法がありました。これらは磁性体に働くトータルの電磁力やトルクを求めるには有効ですが、電磁力の空間分布はそれぞれ異なり、物理的には意味がありません。マクスウェルの応力法は多く使われてきましたが、積分面を定義する必要があり、またその面をどこに設定するかで精度が変わり、面倒な問題がありました。

 ローカルな電磁力を求める方法として、エネルギー法ががあります[30]。この方法は、要素単位で仮想変位に対しEnergyあるいはCo-energyを変分するもので、ローカルな力の分布が求まります。この変分において、$A-\phi$法においては磁束を保存して、すなわち$A$の線積分値を保存して行う必要があります。辺要素ではこの値は辺に割り振られていますので、磁束を保存して 変分する事が可能です。逆に言いますと、節点法でエネルギー法を使用することには理論的な困難があります。

 エネルギー法を分析しますと、その形はマクスウェル応力テンソルに仮想変位に対する節点形状関数を掛け積分しているものと同じであることがわかります。これは、構造解析で使われる節点力(分布力を有限要素法の加重条件として節点にかかる力に変換します)と同じ形をしています。この形で考えますと、マクスウェルの応力テンソルさえ解っていますと、それを積分するだけでローカル力を節点に働く力として導出できます。これを節点力法と呼んでいますが、辺要素法の場合はエネルギー法と等価であることが証明できます[15]。節点力法の利点は、エネルギー法に比べ導出が非常に容易であること、辺要素法だけでなく節点要素でも適用できるであろうことですが、基本的には同じ手法と言うべきでしょう。

 節点力法において重要なことは、マクスウェル応力テンソルが磁場量($B$,$H$)により確定していることです。磁性体が線形な場合は異論はあまりないのですが、非線形な場合や、特にヒシテリスがあるような場合は、理論的に明確な形式を得ていません。今後、磁性体内の電磁力分布が変形等に効果を及ぼし問題になれば、この点が問題となってきます。

 EMSolutionでは、この節点力法で磁性体の電磁力を求めますが、問題もあります。磁性体ににおける磁場は多く場合角点等に集中し ます。このとき、そこでの節点力は他の場所に比べ圧倒的な大きさとなり、電磁力の精度はそれにより支配されます。ところが、角点周辺の磁場の解析精度は一 般にそう良いものではありません。特に、磁性体が両側から引かれほぼ釣り合っているような場合、トータルの電磁力が一つの節点に働く電磁力より小さい場合 があり、このようなときには、打ち消し誤差が大きくなり、トータルの電磁力を精度良く求めることが困難になります。これに対するトータル力を求める際の一つの解決策は、磁場が滑らかで計算精度のある領域まで節点力の積算する範囲を磁性体周辺の空気領域まで拡張することです。マクスウェル応力法でも積分面を磁性体から離れたところに設定しますが、これと同じことです。ただ、どこまで拡張すれば良いかは経験的に決めざるを得ません。

 節点力法は節点量として出力され,プランジャーやアクチュエータの電磁力,モータのトルクはもちろん,応力,振動解析への電磁力の受け渡しとして使用されています。応力,振動解析では先に述べたように力は節点力として扱うため,節点力法がむしろ都合がよいようです。