電磁界解析ソフトウェアEMSolution

収束条件と解析精度

概要

必要な精度を得るためにICCG法やニュートン・ラフソン法の収束条件をどのようにするかは大きな課題です。 おそらく十分な精度を得るために、収束条件を厳しくする例が多いかと思いますが、収束条件を厳しくしますと、計算時間がかかることになります。 問題により、あるいは求める物理量により必用な収束条件は異なってくると思われ、 一概に指針を与えることは困難ですが、ここでは、TEAM Workshop Problem 20を例として、考察して見たいとおもいます。

Fig.1 TEAM Workshop Problem20

解説

繰り返しごとの非線形計算時の残差と磁場の変化の最大値($ δB_{max} $)の関係を調べます。(Fig.2)
計算は、コイル電流4.5kAの場合です。 これから見ますと、残差と$δB_{max}$が比例するとはいえません。 むしろ$δB_{max}$の収束が遅くなっていることが分かります。 残差が$10^{-3}$程度になっていても、磁束密度の繰り返し毎の変化が0.1T近く変動しています。 このことから見ますと、従来残差で収束条件を与えていましたが、適当でない場合がある可能性があります。 このことに鑑み、$δB_{max}$を収束条件とすることができるよう、EMSolutionを変更しました。

Fig.2 残差と$δB_{max}$

$δB_{max}$を収束条件として計算した場合の電磁力と鉄心平均磁束密度の$δB_{max}$に対する依存性をTable 1に示します。$δB_{max}$=0.01Tで有効桁5桁の範囲で収束しています。また、0.2T程度でも実用的には十分な精度が得られているものと考えられます。磁場の変動幅が0.2Tでも十分というのは予想外でしたが、変動しているのが局所的なためと考えられます。$δB_{max}$=0.1Tの磁束密度分布から、$10^{-6}$Tの場合のものとの差分を示しますと、Fig.3,4のようになります。この誤差は、センターポール上下部に集中しています。吸引力は鉄心周りの空気部の磁場分布のみが関わっており、鉄心内部の誤差の影響を受けにくいものと思われます。また、平均磁束密度はセンターポールと脚鉄のそれぞれの中心での値を計算しており、誤差の大きいセンターポール上下部と離れているため、これもまた影響が少なかったものと思われます。

Table1. 電磁力と鉄心平均磁束密度

Max delta B吸引力(N)平均磁束密度
(センターポール,T)
平均磁束密度
(脚鉄,T)
0.585.94042.08307E+004.55299E-01
0.276.38402.00550E+004.39149E-01
0.176.27242.00512E+004.39034E-01
0.0176.27122.00510E+004.39021E-01
1.00E-0676.27122.00510E+004.39021E-01

Fig.4 $δB_{max}$=0.1Tでの磁束密度誤差分(センターポール下部)

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