電磁界解析ソフトウェアEMSolution

EMSolutionの基礎4-7
その他特徴的な機能

 EMSolutionの特徴的なものとして、EMSolutionの基礎4.5で述べた、磁場・電流ソースの多様性があげられると思います。特に、SDEFCOILおよびSUFCURは特徴的なものです。

 SDEFCOILは現状、使用は矩形断面コイルに限られ、導体の周りの4面を定義する必要がありますが、任意の屈曲したコイルが定義でます[8]。定常電流を解いて求める方法でなく、幾何学的に電流分布を与えます。定常電流を解く方法では、コイル内周側に電流が集中するようなことが起こりますが、SDEFCOILではほぼ一様に電流が流れます(図11)。電流保存が厳密に成り立っています。手法的には、二つのスカラポテンシャルを使用し、電流密度を$J=\nabla \phi \times \nabla \psi$で表現します。

 SUFCURはバルク導体で電流分布が前もって解っていないコイルに適用します。基本的には導体両端に電気スカラポテンシャルを与え、渦電流問題としてコイル領域を解きます[9]

 特殊要素として、狭い磁性体中のギャップや導体中の絶縁面を扱うギャップ要素、薄い導体を扱う薄板導体要素、表皮厚が小さい定常渦電流を取り扱う表面インピーダンス要素[3]のような二次元要素があります。これらはいずれも適用限界がありますが、適切に使用すると解析の効率化が図れます。いずれも、もし三次元要素で分割を行いますと、非常に扁平な要素を必要とし、ICCG法の収束の低下が深刻になります。

 有限要素法において、開領域問題における困難があります。通常、充分広い領域を有限要素領域に取り、境界の影響が小さくしています。ただ、どの程度の領域まで、どの程度の細かさのメッシュを取って行くかは経験に頼っているとしか言えません。EMSolutionでは、$B_n$=0と$H_t$=0の境界条件が用意されていますので、その両方の結果から、境界がどの程度影響を持っているかが判断できます。また、無限境界要素を利用可能としています[31]。ただ、軸対称二次元問題でしか実用的ではありませんでしたが,最近三次元問題でも十分適用できる手法を提案され、実装しています。

 外部回路系や運動との連成を解く場合は、回路方程式や運動方程式と電磁場方程式を連立させる必要があります。EMSolutionで は、電磁場方程式と回路方程式は一つの全体マトリックスとして連立させています。運動方程式とは、電磁力および位置をやり取りし、繰り返し計算を行ってい ます。基本的にはクランクニコルソンの$\theta$法を時間方向の離散化に使用していますが、それぞれの方程式系での$\theta$値を適当な値に設定することがかなり難しく、また重要な問題かと思われます。それぞれの時定数等性質が異なり、特に非線形性が強い場合には、$θ$法で充分か疑問なところもあります[12]