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日本設備管理学会2023年春季大会で発表

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設備管理学会2023年春季研究発表大会での発表の概要を記します。

はじめに

当社ホームページで紹介した2021年の設備管理学会での発表(その1その2)では、真空熱処理炉のロータリー真空ポンプの振動を無線式振動センサのコナンエアで1時間に1回計測したデータを分析した結果、ポンプの振動(加速度rms)と軸回転数との相関がポンプの運用状態の指標になることを提案しました。大部分の振動計測結果では、軸回転数が低い場合はポンプ負荷が大きいので加速度rmsが大きくなることは妥当と判断できます。しかし、軸回転数がより低くなると、上記の相関が消失する運転ケースが少数(1%以下)存在したので、注意すべき運転という意味で「レッド運転」と仮称しました。


以上の結果を踏まえ、コナンエアによる振動計測結果とポンプ駆動モータの電流、ポンプ温度および炉運用状態との紐付けできるような計測システムを構築し、レッド運転の意味付け他を試みた結果を2023年春季研究発表大会では発表したので、以下にその概要を記します。

得られた成果

■ 加速度rmsと軸回転数の相関
レッド運転発生時のポンプ駆動モータの電流や炉の運転状態との関連を調査しました。その結果、レッド運転のほとんどがポンプの起動時に対応していたことが分かりました。このようなレッド運転はポンプ運用として問題はありません。しかし、ポンプ起動時に対応しないレッド運転も少数検知されました。このような運転に対し、炉の運用日誌と照合した結果、必ずしも適切とは言えないポンプ運用があったことが分かりました。さらに、振動特性が多数計測された結果として、ポンプが適切に運用されている状態に対する振動特性の分布範囲を概ね把握できました。このようなデータに基づき、炉の運転が適切な範囲を逸脱した時の検知ができる仮ロジックを設定することができました。

■ 3軸加速度と装置ステータス(炉の運用状態)の関係
ポンプの振動の大きさと方向は、粗引き(大気圧から主高真空ポンプに切り替える圧力まで排気すること)開始から熱処理終了まで一定ではなく変化しますが、この変化はロータリーポンプの負荷側弁の開閉に関係していると考えられます。今後のデータ蓄積により、監視対象のポンプの状態について、より正確に把握できる可能性があります。

■ ベルトがけポンプの特徴
ベルトがけポンプでは、ベルトの劣化・切断を事前に検知できることが求められています。今回の計測では、ベルト切断前と交換後の振動や音の特性変化をとらえることができました。今後のデータ蓄積により、ベルトの劣化・切断の判定を行うことが可能と考えています。

さいごに

今回は、日本設備管理学会2023年春季大会にて「熱処理炉用ロータリーポンプの多種物理量と炉運転状態の計測結果の報告」として中日本炉工業様と当社が共同発表した内容を紹介しました。ご興味のある方は、弊社までにお問い合わせください。

e-mail : argoculus@ssil.co.jp


研究は現在も継続中で、日本設備管理学会の2023年秋度季大会でその後の成果を発表しました。次回は、2023年秋度季大会での発表について掲載します。

Argoculusの活用

上記分析において、データ計測にはArgoculusを利用しました。中日本炉工業様は、2017年にArgoculusを導入し、IoTの有効性を検証しました。それ以降、継続的にシステムを進化させていきながら、現在は専用のIoTシステムを構築・運用しています。中日本炉工業様におけるIoTシステムの発展に関する事例は、後日公開予定です。