EMSolution:機能と特徴

1.はじめに

EMSolutionは電気機器の磁場、渦電流、電磁力などを解析する汎用三次元有限要素法解析プログラムです[1]。 近年、コンピュータの機能の向上により、電磁場解析の分野でも大規模な解析を高速で実行することができるようになり、電気機器の高性能化に資する様になりました。 EMSolutionは、辺要素法、ICCG法、節点力法やスライド法等先進的解析技術を真っ先に開発導入し、お客様の高度な解析要求に応えてきました。 計算容量の低減、計算速度の向上により、大規模高精度な解析を現実的なものにしてきました。 大は核融合装置やリニアモーターカー、発電機やモータ、変圧器や大電力送電機器、小は超小型モータや磁気ヘッド等の電磁場解析で幅広く活躍しております。

本稿では、まず、EMSolutionにおける主な機能や解析法の主な特徴を述べます。
次に、主な解析法について、EMSolution開発に関連してその意義や問題点を考察してみたいと考えます。 特に、辺要素およびICCG法の話題について重点的に述べてみたいと思います。

2. EMSolutionの主な機能

EMSolutionは、標準的な三次元有限要素電磁場ソルバですが、その主な機能は次の通りです。

  • 準静磁場領域(変位電流を無視した電波を含まない周波数領域)における広範な電磁場解析を行います。種々な磁場・電流源の下での静磁場交流定常磁場渦電流を含む過渡磁場の三次元解析(二次元解析も含む)を行います。
  • 一次4面体、6面体、3角柱および二次6面体辺要素を備えています。また、辺一次節点二次4面体要素により、4面体要素による渦電流解析の向上が図れます[2]
  • 磁性体透磁率は線形および非線形導体導電率は線形としています。それぞれ異方性を持たせることができます。成分独立でない異方性や、ヒシテリスは現状取り扱えません。
  • ギャップ、絶縁、薄板導体、表面インピーダンス[3]の二次元特殊要素を備え、メッシュ生成を容易にするとともに、計算の効率化が図れます。
    種々な磁場・電流源を用意しています。
  • COIL: 2ポテンシャル(A-Ar)法を使用した磁場源を与える方法で、メッシュと独立した磁場・電流源を与えられます[4,5.6]。メッシュ生成を容易にするとともに、解析領域の低減ができます。また、自由に空間内を動かすことができ、運動が取り扱えます。直線や円弧等種々な形状の磁場源を定義できます。
  • ELMCUR:基本的に各要素に電流分布を入力します[7]。要素の面を通過する電流を入力し、電流ベクトルポテンシャルで要素内電流を定義します。面がそろっていないメッシュでは入力が難しくなります。
  • ・SDEFCOIL:矩形断面の導体に対し、導体表面を定義しその中に流れる電流が幾何学的に与えられます。電流の保存が厳密に保たれ、ICCG法の収束が保証されます[8]
  • ・SUFCUR:バルク導体に通電する場合に使用します。表皮効果が見られます[9]
  • ・MAGNET:有限要素に磁化を与えます。 磁場の法線成分あるい接線成分がゼロとなる境界条件や、並進および回転周期境界条件が取り扱えます。回転したときに上下に反転する境界条件も取り扱え、クロータイプの回転機での解析領域を半減できます。
    外部回路系との連成が可能で、定電流、定電圧電源、抵抗、インダクタ、コンデンサおよびダイオード等の非線形素子と結線できます。
    次の運動を含む解析を行うことができます。これらは、強制運動を与えることができるとともに、運動方程式との連成を行うことができ、種々の外力の下での運動解析が行えます。ただし、現状一次元運動に限っています。
  • COILの運動:磁場・電流源COILの運動を与えます。空芯コイルが運動する場合に使用できます[10]
  • スライド運動:空気中の面を境に滑りとして表される運動を取り扱います。回転機やリニアモータなどで使用できます[11]
  • 変形運動:プランジャ等の磁性体や導体間の距離が変わるような運動を取り扱います。周辺の空気メッシュの変形によって運動を表します[12]
    磁場、渦電流およびその発熱、電磁力等の分布量を出力します。また、各部材の全発熱量、トータル電磁力、トルクを出力します。また、磁場・電流源や外部電気素子の電圧、電流や鎖交磁束を出力します。コイルインピーダンス等は電圧電流関係により求められます。
    主な市販のプレポストプロセッサと入出力ファイルを通じてインターフェースを取っています。
    図1に運動を変形運動で表し、運動方程式と外部回路を連成した解析モデルの例を示します。本解析は二次元軸対称で行っています。もちろん三次元でも同様な計算が可能です。

    –>永久磁石モータのコギングトルク二次元解析
    –>永久磁石モータのコギングトルク三次元解析
    –>運動と外部回路系を連成した電磁場解析
    –>誘導電動機の解析

3. EMSolutionにおける解析法の主な特徴

A-Φ法辺要素有限要素法ICCG法等の最近標準的になった解析法を最初から取り入れ、解析の低容量化高速化を行い、大規模解析を可能としました。

木構造によるTreeゲージΦ=0ゲージを課すことができます[13]。最近ではゲージを課さない方が、計算が速いことが明らかになってきましたが[14]、これらのゲージにより未知数を減らせ、計算容量の低減が図れます。

変形磁気ポテンシャルを使う2ポテンシャル(A-Ar)法を採用しています[4,5,6]。この方法により磁場・電流ソースで示したCOILの様なメッシュと独立した磁場源を定義する事ができます。Arは磁気スカラポテンシャルWrと置き換えることができます。

非線形解析においては、ICCG法とニュートンラプソン法による非線形繰り返し計算の収束を調整し、非線形計算の計算速度を向上させています。

過渡解析では、クランクニコルソンのθ法を用います。

節点力法を独自に開発採用し、電磁力を分布も含め計算します[15,16]。このことにより、Maxwell応力法のような積分面の煩わしい指定は不必要です。非磁性体におけるローレンツ力も計算できます。

二次元は三次元問題に焼き直します。すなわち、一層の有限要素メッシュとして解析します。このことにより、二次元、三次元の統一的な解釈が可能となります。三次元として扱いますので若干の計算の無駄はありますが、自由度等は同じで通常の二次元解析と等価です。

4. 解析法についての考察

まず、何故、有限要素法か、ということが問われますが、あまりに一般的な話ですので、省略します。ただ、

・有限要素法の汎用性が非常に高いこと、
・定式が容易なこと(積分より微分はうんと易しい)、
・疎行列を扱い計算速度および容量が小さく大規模計算にも耐える、 などが有限要素法が多く採用される理由かと考えます。

4.1.A-Φ法

EMSolutionでは磁気ベクトルポテンシャルAおよび電気スカラポテンシャルfを用いるA-Φ法を基礎とする辺要素を用いる有限要素法を採用しています[17]

A-Φ法T-Ω法と並ぶ通常磁場解析に使用される基礎的な定式ですが、その特徴はT-Ω法と比較して

  • 渦電流多連結導体問題の取扱が容易であること
  • 非線形問題での収束性が良い(らしい)こと
  • 変位電流を含めた高周波問題への拡張が容易(らしい)こと

が挙げられますが、
一方、T-Ω法では非導電性領域がスカラ関数Wで取り扱えるのに対し、A-Φ法ではベクトル関数Aを用いる必要があり解析の自由度が大きくなる不利な点が有ります。

A-Φ法とT-Ω法は双対関係に有り、例えば静磁場解析において磁気エネルギーの積算値は両手法によって求められる値に挟まれることが知られています。誤差評価の観点からは、将来的には両手法による解析を行うことも考えられます。

EMSolutionでは、基本的にA-Φ法を採用していますが、未知数を減らすため空気領域に対しては磁気スカラポテンシャルWを使用できるものとしています。
ただ、システム行列の正値性が無くなるためか、ICCG法の収束がかなり悪いものになり、計算時間の短縮にはあまり役には立っていません[18]‐B計算機の容量が不足する様な場合に限り使用することにしています。

また、EMSolutionの特徴として、空気領域に対し変形磁気ポテンシャルArを使用することができます(2ポテンシャル法[4,5,6]。Arは解析領域内の渦電流や磁化による磁場の寄与分を表しており、ソース磁場を分離したものです。ソース磁場は、ビオ・サバール則より求められます。Arを使用する利点は、

  • ソース電流を解析メッシュと独立に表すことができること
  • ソース電流による磁場は含んでいませんのでソース電流近傍のメッシュをそう細かくする必要は無いこと
  • ソース電流は解析領域外に有っても構わないこと

これを使いますと、ソース電流は自由に解析領域内を動かせることができ、運動導体がある場合の解析が容易となります[10]。 2ポテンシャル法はソース磁場の計算に多大の計算時間がかかると多く言われています。この方法では、トータルポテンシャル領域(Aが変数となる領域)と変形ポテンシャル領域(Arが変数となる領域)の境界面で、辺上のソース磁気ベクトルポテンシャルおよび面上の磁場強度(H)を積分する必要があります。これらは、ソース源が変位する場合を除き、一度計算しておけば良いものであり、EMSolutionではそう大きな負荷にはなっていません。 ビオ・サバール則の積分には種々解析積分があり、それらを利用する必要はあります[19]

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4.2. 辺要素法

辺要素有限要素法は、1980年代から広まった比較的新しい解析技術ですが、その利点が認識され広く用いられるようになり、EMSolutionにおいても採用しています。 A-Φ法辺要素法では、Aに対し辺要素形状関数を適用します。 従来の節点要素法では各節点にAのベクトル3成分を未知数として割り振ってきましたが、辺要素法では各辺にAの線積分量を割り当てます。辺要素形状関数の特徴は要素境界で接線成分のみの連続性が有るのみで、法線方向の連続性は仮定しません

辺要素の導入により、それまで困難であったことや不明確であったことが解決されました。高周波解析でのスプリアス解が出なくなったことはよく知られていますが[20]、低周波領域でも多くのことが解決されました。 まず、ゲージ問題の解決があります。節点要素法ではゲージ固定のためにペナルティ法等によりクーロンゲージを課すことが行われましたが、その必要性やペナルティの重みが不明確なものでした。境界条件を適当に入れれば解けてしまう場合も有りました[21,22]。節点法における問題点は、その使用される有限要素関数空間の中の非回転場(回転(rotation)がゼロの関数空間)が不明確で(図2)、これを除くためにはいろいろな工夫が必要だった様に思われます。

辺要素の導入により、ゲージ問題は一気に解決されました[13]。まず、節点要素では離散化された関数空間の中でゲージ変換は困難でしたが、辺要素関数空間の中では連続場と同様に変換が可能になりま した。ゲージ不定性は、ゲージ変換可能性があって意味を持ちます。A-Φ法おいては、ベクトル場Aとスカラ場fのゲージ変換が自由にできることになりました。離散化された辺要素関数空間の中では、ベクトル場の中の非回転場はスカラ場の勾配(gradient)で表され、スカラ場の勾配がベクトル場に含まれるように構成することができます(図3)。このことにより、非回転場を明確に分離することが可能になりました。このことは、とポテンシャル表示した場合、元々とは同じ一つのものを表現していることを意味し、相互に入れ替えられることを可能にしました。

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上に述べたように離散化関数空間の中でもゲージ変換が可能で有ることは、何らかのゲージ変換を課さなければ、不定性が方程式の中に残ることを意味します。ICCG法により不定方程式を解くことについては、後で述べますが、ここではゲージ固定について述べます。

ゲージ固定の方法として、一つは木構造(Tree, Co-tree)による固定方法があります[13,23]。これは、有限要素メッシュ内の辺を回路網解析の手法で分解することによります。Treeとは、閉ループを構成しない最大数の辺の集合であり、Co-treeはそれを加えると閉ループができてしまう辺の集合と言えます。その、分解の仕方は一意的では有りませんが、それぞれの数は決まっています。このように分解し、通常Tree辺の自由度はゼロとし、変数から除きます。この方法は、明確に不定性を除くことができ、理論的には美しいのですが、共約勾配法の収束が(極度に)遅くなることが知られています[24]

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ゲージ固定のもう一つのとして、辺要素でもクーロンゲージを、ラグランジの未定常数法の形で課す方法が有ります[25]。そこでは、クーロンゲージ(div A=0)の弱形式を条件として課します。この手法は、物理的にも意味のあるゲージを課すことで、ポテンシャルの意味が分かりやすいものにはなりますが、解法としては、未定常数が加わり未知数が多くなること、行列の正値性が無く解きにくいものになり(様に思われる)、不利と思われます。そのようにしなくても、クーロンゲージを満たしていない解から、ゲージ変換によりクーロンゲージを満たす解を求めることが可能です[26]

導体部に対しては、Φ=0のゲージを課すことができます[13]。これだけでは非導体部の不定性は残されますが、ICCG法により解くことができ、通常Aと呼ばれています。このように、種々ゲージ固定のやり方はあり、求まったポテンシャルはそれぞれ異なりますが、それらは相互にゲージ変換できることが示され、物理的に意味のある電場や磁場を計算しますと、全く同じ結果となります

EMSolutionでは、のゲージや木構造によるゲージ条件を入れられるようにしています。ただ、木構造によるゲージはICCG法の収束が遅いことが理論的にも示され[28]、また実際的にも非常に計算時間がかかり、実用性はあまりありません。また、ゲージは未知数は少なくなるのですが、やはり収束が遅くなります。特に、低周波の渦電流解析ではfを変数とすることは必須のものと思われます。

辺要素により、容易でわかりやすくなったものの一つとして、境界条件が有ります。電磁場解析での代表的な境界条件として、電気壁条件(Bn=0)と磁気壁条件(Ht=0)が有りますが、A-Φ法辺要素では電気壁に対しその面上の辺の自由度をゼロ固定条件、磁気壁では自由にすれば充分です。節点要素ではこうはいかず、傾い境界面では三成分を考える必要がありますし、角点では話は複雑になります。

辺要素形状関数では、要素境界でベクトルの法線成分が連続にはなりません。例えばベクトルポテンシャルAを辺要素で表現した場合、上の不連続性が電場Eに現れます。ポテンシャルが不連続になることが嫌われることがありますが、この方が合理的です。例えば、A法で渦電流を計算し、導電率に不連続性が有ったとします。この時、渦電流の法線成分は連続になるはずで、Aの法線方向成分は不連続となる必要が有ります。H法(これはT-Ω法でのゲージ条件を課したものです。)においても同様に、磁束法線成分の連続性が同じ話となります。節点要素の法線成分連続な関数を使いますと、この様な不連続面ではうまく行きません[22]

EMSolutionでは、辺要素種としては、4面体(4辺Nedelec一次)、三角柱(9辺)、6面体(12辺)の一次要素、セレンディピティ族20節点6面体[17]に対応する二次6面体要素(36辺)(図4)を用意しています。最近、表皮効果の大きい渦電流解析で一次4面体要素を使用すると、渦電流密度分布が滑らかにならないことが解り、一次辺要素に二次節点要素関数を加えたものを考案し、扁平な4面体要素でも妥当な解が 出ることを示しました[2](図5,6,7)。

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4.3. ICCG法

ICCG法は、不完全コレスキー分解付共約勾配法の略ですが、EMSolutionではこの方法を全面的に採用しています。この方法は、有限要素法に特有の疎行列線形連立方程式を低容量で高速に解くことができます。また、下に述べますように、辺要素法に非常にマッチした方法であると考えています。

まず、ICCG法は辺要素法で特有な不定の方程式が解けます。開発当初、不定方程式が解けるはずが無いと考え、木構造によるゲージを課し不定性を無くしていました。ただ、解けることは解けるのですが、極端に収束の遅いものでした。ゲージ条件をはずしますと、不完全コレスキー分解でゼロ割が起こりました。やむをえず、いろいろ調べましたが、Treeゲージの取り方により、少しは収束は良くなるのですが、それでも収束は非常に遅いものでした(図8)。ところが、岡山大学ではゲージ条件無しで高速に解いておられました。岡山大藤原氏に相談したところ、行列の対角成分に1より少し大きい数(確か1.02でした。加速ファクタと呼ばれています。)を掛けられていることに気がつきました。これを試してみると、なんとすかすか解けてしまいます(図9)。その後、藤原氏は、加速ファクタについて詳細に調べられ、その最適値を求める方法を考えられています[27]

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ICCG法は不定の方程式が解けるのですが、右辺のソース項に電流連続を満たさない電流を入れてしまった場合方程式は解を持たない不能の方程式になります。意識的に不能な方程式にしなくとも、数値解析においては切り捨て誤差等があり、多かれ少なかれ不定の方程式は不能なものになってしまいます。もし、これを直接法で解くと全くおかしい答えが出てきます。ところが、ICCG法で解きますと、このような方程式でもある程度収束し、その後発散します。それで、その最も収束したところの解を取りますと、かなり精度のあるものが出てきます[8]。また、その収束はどうやら方程式に含まれる誤差程度まで行くように思われます(図10)。逆に言いますと、収束誤差は方程式の不整合性の指標となります。時たま間違った設定を行い計算しますと、ICCG法が全く収束しないことがあり、見直すと間違っていたことが解ることがあります。こういう意味で、ICCG法は方程式の不能性やその程度を示してくれる良い方法といえます。

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2ポテンシャル法では、ソース項をビオ・サバール則の積分を行い求めます。ソースと積分領域(トータルポテンシャル領域と変形ポテンシャル領域の境界)が近いときどうしても誤差が大きく出てしまいます。これの不能性を除く方法も考えられますが、EMSolutionでは何ら補正をしていません。このため、2ポテンシャル法で計算したときは、ICCG法の収束がある程度まで行くのですが、その後発散します。しかし、上に述べたように、最も収束したところの解をとれば妥当な解が得られ、実用的には問題は小さいものです。

–>変形ポテンシャル領域に配置する外部磁場電流ソースのICCG法収束性に対する影響

その後、ICCG法については、静磁場、過渡解析の実数計算だけでなく、定常解析の複素数計算にも使えることが示されました。また、木構造のゲージのみならず、のゲージもはずした方が収束が早くなることが示されました[14]。このことは、不定性を多くしておく方が収束が早いことを意味し、理論的にも証明されました[28]。また、ICCG法は負の固有値を持つ行列でさえ解くことができるようです。実際A-Ω法でやりますと負固有値が出てくるはずで、前に述べましたように収束はよくありませんが、解くことはできます。また、外部回路計を結合させた場合にも行列対角成分に負値が入っていますが、やはり解けます。これは、どうも不完全コレスキ分解による前処理に起因しているものと考えられます。

しかし、ICCG法でも非常に収束が遅く解きにくくなる場合があります。例えば、非常に間隔の狭い磁性体間のギャップがある場合に、非常に薄い要素を使用した時です。このよう場合非常に困ります。これに対しては、EMSolutionでは、特殊なギャップ要素を使用します。このことにより、収束は早くなり、また、通常の三次元要素を使った場合と同じ解が得られることを確認しています。

–>ギャップ要素を用いた解析

ICCG法の収束しない他の例としては、A法(Φ=0のゲージ)を使って渦電流問題を解くとき、非常に周波数が低くなった場合があります。この場合は、収束したとしても、得られた渦電流は妥当なものとならないようです。ところが、A-Φ法としますと、収束は静磁場解析と同じくらいとなり、解も妥当なものとなります

4.4.非線形収束法

EMSolutionでは、非線形問題を解く際には、ニュートンラプソン法を適用しています。ここでは、その方法自体についてはおきまして、ICCG法の収束と関連について述べたいと思います。

非線形問題では、ICCG法の収束ループを内側に含む非線形収束ループの二重ループを解くことになります。非線形ループが収束していない段階で、内側のICCG法の収束条件をあまり強くしても意味がありません。このため、EMSolutionでは、ICCG法の収束条件を非線形収束に関連させて、変更して行きます。ICCG法の収束は、多く場合最初急激に収束誤差が小さくなり、その後だらだらと収束して行きます。非線形収束が悪い段階ではそのゆっくりした収束が行われないで、次の非線形ループに入って行きます。このことが、SRCの磁気ヘッドベンチマーク問題[29]で、EMSolutionが他のソフトウェアより格段に高速であった主な理由ではないかと考えています。

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4.5.節点力法

従来、磁性体に働く電磁力を求める手法として、等価電流法等価磁化法あるいはマクスウェルの応力法がありました。これらは磁性体に働くトータルの電磁力やトルクを求めるには有効ですが、電磁力の空間分布はそれぞれ異なり、物理的には意味がありません。マクスウェルの応力法は多く使われてきましたが、積分面を定義する必要があり、またその面をどこに設定するかで精度が変わり、面倒な問題がありました。

ローカルな電磁力を求める方法として、エネルギー法ががあります[30]。この方法は、要素単位で仮想変位に対しEnergyあるいはCo-energyを変分するもので、ローカルな力の分布が求まります。この変分において、A-Φ法においては磁束を保存して、すなわちAの線積分値を保存して行う必要があります。辺要素ではこの値は辺に割り振られていますので、磁束を保存して変分する事が可能です。逆に言いますと、節点法でエネルギー法を使用することには理論的な困難があります。 エネルギー法を分析しますと、その形はマクスウェル応力テンソルに仮想変位に対する節点形状関数を掛け積分しているものと同じであることがわかります。これは、構造解析で使われる節点力(分布力を有限要素法の加重条件として節点にかかる力に変換します)と同じ形をしています。この形で考えますと、マクスウェルの応力テンソルさえ解っていますと、それを積分するだけでローカル力を節点に働く力として導出できます。これを節点力法と呼んでいますが、辺要素法の場合はエネルギー法と等価であることが証明できます[15]。節点力法の利点は、エネルギー法に比べ導出が非常に容易であること、辺要素法だけでなく節点要素でも適用できるであろうことですが、基本的には同じ手法と言うべきでしょう。

節点力法において重要なことは、マクスウェル応力テンソルが磁場量(B,H)により確定していることです。磁性体が線形な場合は異論はあまりないのですが、非線形な場合や、特にヒシテリスがあるような場合は、理論的に明確な形式を得ていません。今後、磁性体内の電磁力分布が変形等に効果を及ぼし問題になれば、この点が問題となってきます。

EMSolutionでは、この節点力法で磁性体の電磁力を求めますが、問題もあります。磁性体ににおける磁場は多く場合角点等に集中します。このとき、そこでの節点力は他の場所に比べ圧倒的な大きさとなり、電磁力の精度はそれにより支配されます。ところが、角点周辺の磁場の解析精度は一般にそう良いものではありません。特に、磁性体が両側から引かれほぼ釣り合っているような場合、トータルの電磁力が一つの節点に働く電磁力より小さい場合があり、このようなときには、打ち消し誤差が大きくなり、トータルの電磁力を精度良く求めることが困難になります。これに対するトータル力を求める際の一つの解決策は、磁場が滑らかで計算精度のある領域まで節点力の積算する範囲を磁性体周辺の空気領域まで拡張することです。マクスウェル応力法でも積分面を磁性体から離れたところに設定しますが、これと同じことです。ただ、どこまで拡張すれば良いかは経験的に決めざるを得ません。

–>電磁力解析の問題点
–>磁性体に働く表面力について
–>節点力法とMaxwellの応力法の関係

4.6. 運動の取り扱い

EMSolutionでは2章(8)で述べた、3方法の運動の取り扱いをしています。

一つは、2ポテンシャル法を利用したもので、この場合は、磁場・電流源をメッシュと独立に動かすことができます。ただ、ソース磁場がビオ・サバール則により求められる必要があり、磁性体や導体が電流源と一緒に動く場合は適用できません。

二つ目はスライド法によるものです。この方法ににおいては、規則的に分割された滑り面を設定し、固定部と可動部のポテンシャルを接続します。各ステップにおいては、スライド面と有限メッシュの位置関係が変わり、要素間のコネクションが変わりますので、全体マトリックスのコネクションが変更されます。ただ、有限要素メッシュの再分割は必要なく、その変更は高速に行えます。スライド面では、形状関数レベルでは要素は適合していないため、スライド面に接する要素分割はある程度制限があります。しかし、実用的には便利な手法であり、有効なものです。

三つ目は、可動部の周辺の空気部のメッシュを時間的に変更し行うものです。両端の二つのメッシュを用意し、各時刻の節点位置を内そうにより求めています。この場合、全体マトリックスのコネクションの時間的な変更はありませんが、要素の形状が変化しますので、要素行列が変化し、全体マトリックスの更新が必要となります。この手法の問題点は、移動時の要素の変形量が大きくなってしまうことです。固定部との間隔が小さくなるところまで動く場合等は、適用が難しくなります。

以上の方法は、基本的にはメッシュ再分割は必要のないものです。そのための計算時間はほとんどありませんので高速性には優れているのですが、ただ、いずれも適用限界があり、将来的には再分割による方法が必要かと考えています。

4.6. 運動の取り扱い

EMSolutionでは「2. EMSolutionの主な機能」で述べた、3方法の運動の取り扱いをしています。

一つは、2ポテンシャル法を利用したもので、この場合は、磁場・電流源をメッシュと独立に動かすことができます。ただ、ソース磁場がビオ・サバール則により求められる必要があり、磁性体や導体が電流源と一緒に動く場合は適用できません。

二つ目はスライド法によるものです。この方法ににおいては、規則的に分割された滑り面を設定し、固定部と可動部のポテンシャルを接続します。各ステップにおいては、スライド面と有限メッシュの位置関係が変わり、要素間のコネクションが変わりますので、全体マトリックスのコネクションが変更されます。ただ、有限要素メッシュの再分割は必要なく、その変更は高速に行えます。スライド面では、形状関数レベルでは要素は適合していないため、スライド面に接する要素分割はある程度制限があります。しかし、実用的には便利な手法であり、有効なものです。

三つ目は、可動部の周辺の空気部のメッシュを時間的に変更し行うものです。両端の二つのメッシュを用意し、各時刻の節点位置を内そうにより求めています。この場合、全体マトリックスのコネクションの時間的な変更はありませんが、要素の形状が変化しますので、要素行列が変化し、全体マトリックスの更新が必要となります。この手法の問題点は、移動時の要素の変形量が大きくなってしまうことです。固定部との間隔が小さくなるところまで動く場合等は、適用が難しくなります。

以上の方法は、基本的にはメッシュ再分割は必要のないものです。そのための計算時間はほとんどありませんので高速性には優れているのですが、ただ、いずれも適用限界があり、将来的には再分割による方法が必要かと考えています。

4.7.その他

EMSolutionの特徴的なものとして、「2. EMSolutionの主な特徴」で述べた、磁場・電流ソースの多様性があげられると思います。特に、SDEFCOILおよびSUFCURは特徴的なものです。

SDEFCOILは現状、使用は矩形断面コイルに限られ、導体の周りの4面を定義する必要がありますが、任意の屈曲したコイルが定義でます[8]。定常電流を解いて求める方法でなく、幾何学的に電流分布を与えます。定常電流を解く方法では、コイル内周側に電流が集中するようなことが起こりますが、SDEFCOILではほぼ一様に電流が流れます(図11)。電流保存が厳密に成り立っています。手法的には、二つのスカラポテンシャルを使用し、電流密度をで表現します。

SUFCURはバルク導体で電流分布が前もって解っていないコイルに適用します。基本的には導体両端に電気スカラポテンシャルを与え、渦電流問題としてコイル領域を解きます[9]

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特殊要素として、狭い磁性体中のギャップや導体中の絶縁面を扱うギャップ要素、薄い導体を扱う薄板導体要素、表皮厚が小さい定常渦電流を取り扱う表面インピーダンス要素[3]のような二次元要素があります。これらはいずれも適用限界がありますが、適切に使用すると解析の効率化が図れます。いずれも、もし三次元要素で分割を行いますと、非常に扁平な要素を必要とし、ICCG法の収束の低下が深刻になります。

有限要素法において、開領域問題における困難があります。通常、充分広い領域を有限要素領域に取り、境界の影響が小さくしています。ただ、どの程度の領域まで、どの程度の細かさのメッシュを取って行くかは経験に頼っているとしか言えません。EMSolutionでは、Bn=0とHt=0の境界条件が用意されていますので、その両方の結果から、境界がどの程度影響を持っているかが判断できます。また、無限境界要素を一部利用可能としています[31]。ただ、今のところ軸対称二次元問題でしか実用的ではありません。

外部回路系や運動との連成を解く場合は、回路方程式や運動方程式と電磁場方程式を連立させる必要があります。EMSolutionでは、電磁場方程式と回路方程式は一つの全体マトリックスとして連立させています。運動方程式とは、電磁力および位置をやり取りし、繰り返し計算を行っています。基本的にはクランクニコルソンのθ法を時間方向の離散化に使用していますが、それぞれの方程式系でのθ値を適当な値に設定することがかなり難しく、また重要な問題かと思われます。それぞれの時定数等性質が異なり、特に非線形性が強い場合には、θ法で充分か疑問なところもあります[12]

5. おわりに

本稿では、ENSolutionの機能や特徴について紹介しました。また、それに関連し、有限要素法磁場解析における手法の意義や問題点を述べたものです。 始めに述べましたように、EMSolution大規模電磁場解析に対して、多機能で高速な解析ソルバを提供することを主眼としています。このため、メッシュ生成やポスト処理は他の市販ソフトに依存しています。実際の解析現場においては、モデル作成やメッシュ生成に多大の労力が必要としていることを考えますと、電磁場解析に適合したモデラ等の開発が切に望まれます。

磁場解析の一つの問題としては、磁性体の異方性、非線形性の問題があります。特にヒシテリスを含む問題は、装置の効率化を図る上で今後ますます解析の必要性が増すものと思われます。しかし、この解析を実用化することは一筋縄ではいかないと感じております。弊方でも、研究は進めておりますが、磁気特性の複雑さ、多様さを考えますと、プログラム開発だけで済む話ではなく、磁気特性の計測、実機の設計、製作も考え総合的に解析法の開発 を進めていく必要があるのではと思っております。もう一つの問題点として、微細構造を含む場合があります。例えば、多数の鋼板が重ねられた積層磁性体を有限要素法でそのままモデル化することは不可能です。このような系の磁場解析を行って行くには、何らかの近似手法を考えて行く必要があると思われます。

近年、解析がますます大規模化し、将来的にはICCG法でも対応できない可能性があります。最近、マルチグリッド法のような、非常に高速な解析法も発表されており、今後取り入れて行く必要があり、取り組んで行きたいと考えております。

最後に、できるだけ一般的には述べたつもりですが、特に引用等につきましては、弊方に偏ったところもあるとは思いますが、ご容赦お願いいたします。

参考文献

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