電磁界解析ソフトウェアEMSolution

時間周期問題の定常解への高速収束

概要

時間的に定常解に収束することが解っている問題にも関わらず、過渡解析で定常解に達するまでに過大のステップが必要となり、計算が困難になることがあります。"周期的に印可される磁場に対する解の収束性"におきまして、そのような場合の一例を示しました。この問題は、一定定常解に収束します。そこでは、時間ステップ幅を変化させてゆくことにより収束が改善されることを示しました。しかし、かなりの工夫が必要であり、根本的な解決には至りませんでした。ここでは、SD-EEC(Singularity Decomposition-Explicit Error Correction)法を時間周期有限要素法(Time Periodic FEM, TP-FEM)に適用することにより、大幅に改善されましたので報告します。

解説

1.電気回路モデル

まず、簡単な場合として、磁場計算は含まず、次の様な電気回路のみの場合を考えます。EMSolutionでは回路のみの解析もできます。電圧源に100V、1kHzの電圧を加えますと、電流の時間変化はFig.2のようになり、1周期20ステップで1000ステップ計算しても定常に達していません。初期値を0として解析したためですが、一般的には仕方がありません。これに対し、SD-EEC法を適用しますと、Fig.3のように半周期後(10ステップ)でほぼ定常の状態になり、SD-EEC法が非常に有効であることがご理解いただけると思います。本解析はAC定常解析でできますので、比較しますと良く一致しています。この場合のように線形解析ですとAC定常解析が適用できますが、回路素子が非線形の場合や、鉄などの非線形有限要素法と連成するにはAC定常解析は適用できず、過渡解析を行わなくてはなりません。

Fig.1 電気回路モデル

Fig.2 回路電流時間変化

Fig.3 SD-EEC法を適用した場合の
定常解への収束

次に"周期的に印可される磁場に対する解の収束性"の例に適用します。この問題では、円形Diskに回転磁場が印加された場合のジュール損を解析します(Fig.4)。磁場初期値をゼロとして通常の時間ステップ法で計算しますと、Fig.5のように240ステップ計算してもまだ収束には達していません。SD-EEC法を適用としますと、Fig.5赤線で示します様に80ステップ程度で定常に達しています。鋭いピークが15ステップごとに出ていますが、15ステップごとにSD-EEC法の補正を行っており、場が時間的に不連続に変化するため計算上出てくるもので、物理的には意味がありません。むしろ、本手法の収束の目安とお考えください。本例も、直流場渦電流解析で解析できますので、過渡解析をする必要は無いのですが、コイル電流が振動したり、円形Diskが運動方向に一様で無い場合などには必要となります。

Fig.4 円形Diskモデル

Fig.5 円形Disk内のジュール損

2.磁性体・コイルモデル

本手法は非線形磁気特性を含む場合や、回路が連成した場合にも適用できます。Fig.6に適用モデル例を示します。立方体形状の磁性体に外部から電圧源で磁場を加えます。印加電圧は、1000(V){1-cos(wt)}と直流分を含む電圧とし、周波数は100Hzとしました。この場合のコイル電流の解析結果をFig.7に示します。通常の方法(No correction)では100ステップ後でも未だ定常までは程遠いですが、SD-EEC法(Correction)では、二回の補正後である40ステップで定常状態に収束しています。

Fig.6 磁性体立方体モデル

Fig.7 コイル電流時間変化

次に,電気回路に10μFのコンデンサを直列に接続し,意図的に回路の時定数を長くしてみます。Fig.8,9にコイル電流とジュール発熱を示します。補正を行わない場合(No correction),一周期の最後のステップを補正した場合(End correction)と半周期前のステップを補正した場合(Center correction)の比較を示しています。Center correctionでは一周期の後半はプロットされていないため、実際はほぼ2倍のステップが計算されていることにご注意ください。No correctionはもちろんなかなか定常に収束しませんが,End correctionでも100ステップ、5度の補正を行っても未だ定常に収束しておりません。一方、Center correctionでは、3度の補正(60ステップの計算)でほぼ定常に達しています。 このようにN_BACKを使用すると,一周期ごとに補正を行うSD-EEC法よりも効果があります。注意点として,この解析のように磁気非線形性はそれ程強くなく,回路の時定数により定常までの解析時間が決まる場合は,半周期前のステップで補正するN_BACKが効果的なようです。逆に磁気非線形性が強い場合は,半周期前のステップで補正することが必ずしも有効ではなく,他のステップ戻る補正や一周期ごとの補正の方が効果的な場合があるようです。

Fig.8 N_BACKを適用した
コイル電流時間変化

Fig.9 N_BACKを適用した
ジュール発熱時間変化

3.IPMモータモデル

本手法は、スライド法を使用した運動解析にも適用できます。ただし、同期モータのように、電源側と運動の周期が一致しているものに適用できます。「“回転機の高速高精度電磁界解析技術”、電気学会技術報告書 第1094号」で使用されたIPMモータベンチマークモデルに適用してみます。Fig.10に適用モデルを示します。使用するモデルは、極数6、容量500kW相当で、回転数1200min-1、周波数60Hzで駆動されるものです。モータの積厚440mmに対して40mmの永久磁石が軸方向に11枚積み重なられた構造となっています。技術報告書では2極分120度をモデル化しましたが、今回は1極分60度をモデル化し、反周期境界条件を適用します。軸方向は一つの磁石の1/2分モデル化し、磁石間の絶縁膜は0.2mmの空気層として扱います。周方向は1メッシュ1度で60分割しています。1時間ステップで1度回転させて計算します。 通常PMモータですと負荷解析を行う場合、永久磁石による内部誘起電圧がありますので、電圧源解析を行うと定常状態に収束するまでに時間がかかってしまうことが多いと思われます。そこでSD-EEC法の効果を見るため、上記技術報告書では電機子電流を与える電流源解析を行いましたが、端子電圧を与える電圧源解析を行います。線間電圧400Vを与え、コイルの抵抗は上記技術報告書の仕様に載っていませんでしたので、適当に0.01Ωとし,電気位相角(負荷角)を力率がほぼ1となる80度としました。解析手順は、まずステータコイルを開放し、永久磁石のみの静磁場解析を行い、その結果を初期値として電圧源過渡解析を行いました。 Fig.11に電機子電流を、Fig.12にトルクを、Fig.13に磁石一個あたりのジュール損の時間変化を示します。通常の方法(Normal)では電気角3,240deg(3倍)計算を行っても定常には至りません。それに対しSD-EEC法(SD-EEC)では、反周期対称の60度ごとで補正が行われ、補正3回目で定常状態に収束しています。ジュール損は円形Diskでもありましたように、補正1回目,2回目で鋭いピークが出ていますが、補正後は定常状態に収束しています。

Fig.10 IPMベンチマークモデル
(60度・磁石1/2モデル)

Fig.11 電機子電流時間変化

Fig.12 トルク時間変化

Fig.13 磁石一個あたりの
損失時間変化

以上のように、SD-EEC時間周期有限要素法(TP-EEC法)は定常解を求めるのに非常に有効です。是非、ご利用ください。

なお、現状、非線形や時間依存の回路要素には適用できません。また、変形運動を伴う解析にも使用できません。 これまでは、ロータにSUFCURを定義してTP-EEC法を使用すると(一周期補正が行われると)、SUFCURの電流値が発散しておりましたが、SUFCURを補正対象から外すことで計算可能となりました。

使用法

inputファイルにおいて従来のデータに時間ステップデータにN_CORRECTを入力するのみでSD-EEC法が適用されます。解析は過渡解析(TRANSIENT)計算のみで使用できます。周期性には半周期で符号が反転する半周期性と、直流分が含まれ一周期で同じ値になる一周期性があります。半周期性の場合には半周期のステップ数に負符号をつけて入力ください。一周期の場合は一周期のステップ数を入力ください。回路系の入力でCIRCUIT、NETWORK両方に適用できます。SD-EEC法とは関係ありませんが、CYCLEはCOILが移動した場合に利用でき、磁場時間周期のステップ数を入力します。円形Diskの例の場合は、15となります。

* NO_STEPS * INITIAL_TIME(s) * DELTA_TIME(s) * NO_DATA * CYCLIC *N_CORRECT * 101 0 0.0005 0 0 20

N_BACKを使用する場合は、N_CORRECTの後にN_BACK<N_CORRECTとなるステップ数(上記例では半周期前=10)と入力すれば,N_BACKステップ戻って補正を行うSD_EEC法が適用されます。

* NO_STEPS * INITIAL_TIME(s) * DELTA_TIME(s) * NO_DATA * CYCLIC * N_CORRECT * N_BACK * 101 0 0.0005 0 0 20 10

この機能を使用する際、特にNETWORKを使用する場合はTHETAとTHETA_NETWORKを、さらにMOTIONを使用する場合はTHETA_MOTIONを同じ1とした方が安定します。

* ICCG_CONV * ACCEL_FACTOR * DIV_FACTOR * DIV_ITER * SOLVER * THETA * THETA_NETWORK * THETA_MOTION * 1e-006 0 100 100 0 1 1 1

この先は会員の方のみご覧いただけます。

既存ユーザのログイン