電磁界解析ソフトウェアEMSolution

プランジャーの運動解析

概要

運動と外部回路系を連成した電磁場解析の簡単な例を示します。Fig.1の様なプランジャーモデルを考えます。

Fig.1 プランジャー解析モデル

解説

解析は2次元軸対称とします。可動子にはバネ力、重力および電磁力が作用します。コイルは、Fig.1の様な外部回路が接続されているものとします。外部回路は、コンデンサ、抵抗、インダクタンスおよび非線形素子(ダイオード)からなります。初期に、コンデンサに充電しておき、スイッチを閉じ放電を開始します。コンデンサが放電した後には、電流はダイオードに流れ込みます。プランジャーの固定子および可動子は電気抵抗の高い、非線形磁性体としています。 Fig.2に運動の様子と渦電流密度分布の時間変化を示します。磁性体の抵抗率をかなり大きく取っていますので、渦電流密度は低くなっていますし、表皮効果は見られません。
Fig.3に磁束の変化の様子を示します。

Fig.2 可動子の運動と、
渦電流密度分布($A/m^2$)

Fig.3 磁束変化

可動子の上下方向の位置の変動はFig.4の様になっています。最初10mmの位置でバネ力と重力が釣り合った状態から、コイルが励磁されることにより電磁吸引力が作用し、下方向の運動が始まります。Z=0.2mmで反射係数0.7で跳ね返ります。何回か衝突を繰り返した後、Z=0.2mmの位置に止まります。コイル電流が減衰して行くと、電磁吸引力が弱くなり、可動子はバネ力に引かれ上方に戻って行き、単振動を繰り返します。ここでは、摩擦力を含めていません。

Fig.4 可動子の上下位置の変動

回路内のコンデンサ、ダイオードおよびコイルの電流の変化を Fig.5に示します。まず、コンデンサからの放電でコイルに電流が流れ込みます。可動子の衝突による振動により、コイルにそれと同期した電流変化が見られます。コンデンサの放電が終わり、電圧が反転するとダイオードに電流が流れ込み、コイルには電流が流れ続けます。

Fig.5 回路内の電流変化

Fig.6に可動子に働く電磁力の変化を示します。ちなみに今の計算では、バネ定数は1N/mm、重力は0.882Nとしています。可動子の振動による電磁力の変動はあまり見られません。これは、可動子の位置が変化したときに、コイルに磁束を保存するような電流が流れ、磁極間の磁束があまり変動していないことに寄ると考えられます。

Fig.6 可動子に働く電磁力の変化

上の解析は簡単なものであり、また、あまり現実的なものではありませんが、運動および外部回路系の連成をして始めて解るような興味深い現象を示していると思われます。今後、実際の設計や解析に適用されることが期待されます。 本計算のような運動を伴う解析に対しては、有限要素メッシュの変形が必要となります。本計算では、Fig.1の空気領域(水色の領域)のメッシュ を変形させ、運動を取り扱っています。運動の両端でのメッシュを入力し、各時刻で自動的にメッシュを内そう生成します。今の場合、簡単のため、2次元解析 を示しましたが、一般の三次元問題も同様に取り扱えます。また、回転運動に対しても同様に解析することができます。運動方程式の連成は、スライド法を用い る場合にも適用でき、モータや発電機等の解析においても、運動を連成させて解くことができます。 外部回路に対しては、抵抗、インダクタンス、コンデンサおよびダイオードのような非線形素子を取り扱えるようにしました。従来、コネクションマト リックスを入力し、電源と有限要素回路を接続する方式をとっていましたが、今回、有限要素回路を含めた上記素子を、回路ノードに連結して行く方式をとり、 直感的にも分かりやすく入力を容易なものとしました。 運動や外部回路系の連成を行った場合、計算時間の増大が心配されますが、従来の電磁場の計算時間が圧倒的で、連成による計算時間の増大はあまり見られません。上の計算では、400ステップを678秒(DEC a 433MHz)で計算しています。

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