電磁界解析ソフトウェアEMSolution

変形ポテンシャル領域に配置する
外部磁場電流ソースのICCG法収束性に対する影響

概要

変形ポテンシャル領域内は、外部電流磁場ソースの電流源(COIL)を、メッシュと関係なく自由に置けます。しかし、COILがトータルポテンシャル領域に接していたり、あるいは近接していますと、ICCG法の収束が悪くなり、時には収束しなくなります。これは、トータルポテンシャルと変形ポテンシャルの境界面において、ビオサバール則より境界の磁場を積分し、境界条件として与えるのですが、その積分精度が悪くなることに起因しています。
ここでは簡単な例を示し、それに対する対策を説明します。

解説

例として、Fig.1のよう場合を考えます。一辺10cmの磁性体(比透磁率1000)の両側に矩形断面(一辺1cm)の導体に逆方向に1kAの電流を流すとし、静磁場解析を行います。対称性より、x,y,z>=0の1/8領域を解析します。x=0およびz=0面はBn=0、y=0面はHt=0面となります。磁性体の外側は変形ポテンシャル領域とします。空気領域はx,y,z方向に10cmまでとし、外境界でBn=0とします。外境界は変形ポテンシャル領域になっていますので、磁性体の誘起する磁場成分に対して、その法線成分がゼロと課されます。コイルは、z=-1mからz=1m迄のGCEでモデル化しています。

Fig.1 解析モデル

Fig.2およびFig.3に二つのメッシュ(Mesh1, Mesh2)による解析結果を示します。磁束密度の強度分布を示しています。Mesh1では、下で示す3解析を行っていますが、見たところほとんど違いがありません。Mesh2では、コイル近くのメッシュを細かくしています。ただし、長手方向(z方向)にはコイル磁場の変化がありませんので、メッシュは変えていません。もちろんメッシュの差により、精度が異なり、Mesh2において、コイル近傍の磁場が良く出ますが、それ以上にICCG法の収束性が違います。Table1.にいくつかの場合に対する収束性を示します。
木構造によるゲージを課しますと、収束はするのですが非常に回数がかかります。今の場合問題が簡単ですのでこのぐらいで済んでいますが、大規模な問題では、現実的ではありません。また、ゲージを課すことで収束誤差を小さくすることはできますが、計算精度が上がっているかは疑問です。ソース項積分の誤差は同じです。
ガウス積分の積分点数を多くすると収束はかなりよくなります。現状、EMSolutionではソース項の積分も要素行列の積分も同じ次数を使っていますので、他の部分で計算時間が増大してしまいます。今後、ソース項だけは別の次数で計算できるように改良したいと考えます。
Mesh2はそれほどMesh1と変わらないのですが、収束は格段によくなります。コイル近傍のトータルと変形ポテンシャルの境界を含む要素を細分すると、改善されることが解ります。特に磁場変動の変化の激しい方向を細分することがより効果を高めます。

Fig.2 Mesh1での磁束密度強度分布

Fig.3 Mesh2での磁束密度強度分布

TableⅠ ICCG法の収束性

メッシュ積分次数ゲージ条件収束誤差ICCG繰り返し回数
Mesh131.126e-37*
Mesh153.530e-49*
Mesh131.0e-8222
Mesh232.222e-514*
*それ以降は発散

いずれにしろ、コイルが磁性体や導体に近づきますと、その近傍で変形ポテンシャルも大きく変動します。このため、メッシュを細分する必要があります。ただ、コイル形状とは整合せずにメッシュを細かくできますので、この場合でも外部磁場電流ソース(COIL)の利用価値は大きいと考えます。ただ、メッシュを細かくするのが困難で、ICCG法が全く収束しないというような場合は、トータルポテンシャル内にコイルメッシュを作成し、ELMCUR、SDEFCOILによりソース電流を定義されることをお薦めします。

さて、何故ソース項の積分誤差があるとICCG法が収束しなくなるかですが、これは、$A(A-φ)$が不定性を持っているいるからです。誤差がありますと、方程式は不能なものとなります。これは、ソース電流の発散が正確にゼロで無い場合の事情と同じと考えられます(参考文献をご参照ください)。その結論によりますと、ソース項に誤差があっても、ICCG法はその誤差の程度まで収束し、その時点での解はそれなりの誤差を含みますが、妥当なものとなります。

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