電磁界解析ソフトウェアEMSolution

ELMCUR(要素電流ソース)を用いた静磁場解析

概要

EMSolutionで使われるELMCUR(要素電流ソース)は、要素それぞれに電流密度あるいは要素面を通過する電流を与え、電流ソースとするものです。 要素の面や方向がそろっている場合に使用することができます。その例として、電気学会三次元静磁界検証モデル(電気学会技術報告(II部)第286号、三次元静磁界数値計算技術、昭和63年12月)の解析を行います。

本モデルでは、100mm×100mm×200mm(高さ)の鉄芯に四角形コイルによる磁場を加え、その磁場分布を求めるものです。 コイルは高さ100mm,内幅150mm,外幅200mmで、R25(内側),R50(外側)の角取りがあります。鉄芯は比透磁率1000とし、コイルには3000ATの電流が流れるとします。対称性を考え、1/8領域(x,y,z≧0)をモデル化します。

Fig.1 モデル二次元メッシュ

Fig.2 三次元メッシュ

解説

まず、Fig.1のように二次元メッシュを定義します。FEMAP入力の場合、物性番号としてFEMAPのProperty IDを用います。Fig.1の様に各領域にProperty IDを定義して下さい。このメッシュデータをファイルpre_geom2D.neuとしてEMSolutionへの入力データとします。z方向への拡張は、ファイル2D_to_3Dにより行います。上の二つのファイルと実行制御ファイルinputをを同じディレクトリに置き、EMSolutionを実行します。EMSolution実行画面で、実行メニューを選択しますとファイルダイアログが現れますので、input.1ファイルを選択して実行を開始してください。EMSolutionは、pre_geom2D.neuと2D_to_3Dをもとに、三次元メッシュ(Fig.2)を作製します。そのメッシュデータは、post_geomファイルに出力されます。もちろん、三次元メッシュを直接入力して計算を始めることもできます。ELMCURでソース電流を与えるためには、要素の向きをそろえておく必要があります。今の場合、電流は面3から入り面5から出る様に六面体要素を定義します。FEMAPにおいて、各Surfaceを定義する時に、第一番目のEdgeを電流が流入する面に来るようにしてください。

Fig.3 磁束密度分布(T)

Fig.4 コイル内電流分布($A/m^2$)

Fig.5 鉄芯節点力分布(N)

Fig.6 コイルローレンツ力分布($N/m^3$)

解析を実行すると、出力ファイルoutput(サンプルデータにはoutput.1として入っています)が作成されます。outputには、入力メッシュのサマリー、計算の過程、計算結果等が出力されます。また、checkファイルには、入力(inputファイル)のエコー、ICCG法の詳細な収束過程が出力されます。実行時に何らかの異常が見られた場合は、まずこの両ファイルを確認して下さい。また、stderrファイルにエラーメッセージが出力されることがあります。実行ディレクトリには各種のファイルが出力されますが、リスタートを予定している場合にはファイルをそのまま残しておいて下さい。

実行後、ポスト処理を行います。サンプルデータに含まれているinputファイルを利用した場合、出力はFemap neutralフォーマットになります。FEMAPを利用している方は、まず、ファイル名post_geom, magnetic, currentに拡張子 .neu を付けてください。次に、post_geomにはプロパティ、マテリアルの情報が含まれておりませんので、FEMAP上で再度定義して下さい。ここまで準備ができましたら、始めにpost_geom.neuをFEMAPで読み込み、その後にmagnetic.neu、current.neuを読み込み、表示します。

Fig.3に磁束密度分布出力図、Fig.4にコイル内の電流分布出力図を示します。磁束密度の単位はT、電流密度の単位は$A/m^2$です。電流密度はコイル内でほぼ一定になっています。

次に、リスタートにより電磁力を出力します。この場合は、ポスト処理プロセスのみを行えば済みます。再実行時には、outputファイル等出力ファイルが上書きされますので、必要な場合はファイル名の変更等を行っておいてください。まず、節点力分布を求めるため、inputファイルの一部を変更し(input.2)、同じディレクトリでEMSolutionを再実行します。outputファイルの電磁力出力部分をList.1に示します。これは、モデル部分1/8領域に働く鉄芯部とコイル部に働く各方向のトータル電磁力です。電磁力の分布はforceファイルに出力されます。Fig.5に、鉄芯部に加わる節点電磁力(単位N)を示します。透磁率が一定の部材には表面しか電磁力が現れません。同様に、コイル部に対してローレンツ力を求めます(input.3)。outputファイルの各物性毎の電磁力(List.1)をみると、上の節点力求めたコイルに働く電磁力とここで求めたものがほぼ一致します。この場合、電磁力分布は、force_J_Bファイルに出力されます。Fig.6にコイル部のローレンツ力分布($N/m^3$)を示します。

List.1

  • ローレンツ力より求めたコイル電磁力

*** Total J*B Forces ******************************************************************************* No. Fx(N) Fy(N) Fz(N) Mx(Nm) My(Nm) Mz(Nm) MAT 3 -2.68491e-01 -2.68527e-01 -2.22110e+00 -1.31787e-01 1.31785e-01 4.76718e-06 Total -2.68491e-01 -2.68527e-01 -2.22110e+00 -1.31787e-01 1.31785e-01 4.76718e-06

  • 節点力により求めた電磁力

*** Total NODAL Forces and Torques ***************************************************************** No. Fx(N) Fy(N) Fz(N) Mx(Nm) My(Nm) Mz(Nm) MAT 1 1.55697e+00 1.57618e+00 1.06641e+00 -8.15032e-02 8.01692e-02 8.73281e-04 MAT 3 -2.83382e-01 -2.85275e-01 -2.15796e+00 -1.27305e-01 1.27377e-01 -7.65923e-05 Total 1.43569e+00 1.43574e+00 -1.06980e+00 -2.16243e-01 2.16245e-01 -5.32300e-06

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