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EMSolution r9.8.2の改良点 - 電源入力方法

EMSolution r9.8.2での改良点について報告します。改良点は、以下の点です。

  1. 電源電圧のステップ入力
  2. 時間テーブルの周期的な繰り返し
  3. 可変時間ステップ

以下、例を用いて説明します。EMSolution r9.8.1以前のバージョンでは、電源電圧をFig.2のようにステップ的に変化するとして入力しても、その変化が破線のように解釈され、解析結果の精度が悪くなる場合がありました。 ここでは、Fig.1のモデルを例にとって、改良点ついて述べます。

1. 電源電圧のステップ入力
本モデルは、「定電圧電源を接続したコイルの解析」で説明を行っています。 電圧源が5Wの抵抗を介してコイルに接続され、中心鉄心を励磁します。コイル、鉄心および周辺の空気における磁場が有限要素法で解析されます。 有限要素モデルでは対称性により全体の1/8を解析しています。コイルに流れる電流値は解析の結果として求められます。電圧源には、Fig.2の赤実線のようにステップ的に電圧が加えられるものとします。 従来のバージョンで解析しますと、コイル電流波形はFig.3の青破線のように計算されます。黒実線は解析解でかなりな誤差が現れます。今の解析は線形解析としていますので、解析解は、抵抗およびインダクタンスから簡単に求めることができます。
この誤差の原因は、Fig.2において、赤実線の時間変化を入力しても、計算では、ステップ間隔の両端のみを用い、青破線の電圧が加わるとして解析してきたためです。 このため、従来は、「定電圧電源を接続したコイルの解析」で示しましたように、ステップ変化前までの解析を行い、その状態を初期値としてリスタートすることとしていました。 このたび、電圧のステップ入力を可能とし、一度のジョブで本計算を可能としました。Fig.3に赤線で示しましたが、解析解とよく一致した結果が得られます。

Fig.1 解析モデル
Fig.2 電圧入力波形
Fig.3 電流解析結果

ステップ的な時間変化は、[input18.2時間テーブル]において、同時刻に異なる値を入力します。上の解析例の場合はTable1.のようになります。
ステップ変化のときは、その同時刻に対して、ステップ以前と以後の値を入力ください。ステップ前後は線形補間されます。 上の例で(0.1  0)を例えば、(0.1001 0.)にすることが考えられますが、この場合ステップと判断されず、0.1秒の値は100Vと判断されてしまい、Fig.2での青破線と同じ結果になってしまいますのでご注意ください。


Table.1 ステップ入力例

本追加機能と無関係ですが、参考として、NETWORK-THETA値を変えた場合について示します。
時間方向の積分に対してEMSolutionでは場の計算とは別に、回路計算に対してq値を与えられるようにしています。 q=0.5のときは中心差分、q=1.0のときは後退差分となります。Fig.4に示しますように、q=1(後退差分)では精度が下がります。ただ、q=0.5(中心差分)では、 計算が不安定になる場合がありますのでご注意ください。なお、本資料の解析では、q=0.5で大丈夫です。

Fig.4 NETWORK-THETA値に対する解の精度


2. 時間テーブルの周期的な繰り返し
上の追加機能を用い、同じモデルでFig.5のような多ステップの解析も一度のジョブで計算が可能になりました。同時に、時間テーブルの繰り返しが行えるようにしました。 他ステップ入力は、Table.2のようにCYCLEに一周期(秒)を入力するのみです。この繰り返し機能は、ステップ入力のみでなく、一般に使用できます。 Fig.6に電流値時間変化の結果を示します。


Fig.5 多ステップ電圧入力
Fig.6 多ステップ電圧入力時のコイル電流

Table.2 多ステップ入力例

以上の機能は、回路計算でCIRCUITあるいはNETWORKのいずれを用いても使用できます。 NETWORKに対しまして、「直流ブラシレスサーボモータの解析 (スイッチ機能を使用)」で示しましたように、 r9.8.1よりスイッチ機能を追加しましたが、上の解析と同じ解析が、一定電圧の電源でスイッチを切り替えることにより行うことができます。Fig.1の電圧源をFig.7の回路に置き換えれば等価となります。その解析結果をFig.6にあわせて示していますが、同じ結果となっています。


Fig.7 スイッチによる電源電圧の切り替え


3. 可変時間ステップ
最後に、最も重要な改良点ですが、解析時間ステップ間隔を可変としました。例えば、スイッチを使い、その開(Off)時の抵抗を大きくしますと、電流が急変します。そのような場合、Fig.8黒線のように時間間隔が大きいと振動が現れ、誤差が大きくなります。 Fig.8の解析はFig.1の電源にスイッチを直列に挿入し、スイッチを切った場合を計算しています。スイッチのOff時の抵抗を1kΩとしています。 赤線の結果は、スイッチOffからの0.02秒の間の計算時間間隔を1/5にしたもので、過渡状態を精度良く模擬できています。

Fig.8 スイッチ時の電流時間変化

上の例で可変時間ステップ入力はTable.3のようになります。[input 8. 計算ステップ]のデータを変更します。 最初のデータは従来のものと同様ですが、最後にNO_DATAを入力します。これが無入力あるいは1の場合は従来と同様です。従来のデータは、固定時間間隔で計算され、変更の必要はありません。 その後、ステップ数と時間間隔を追加します。出力のステップ番号は、時間間隔に関わらず順番に取られてゆきます。


Table 3. 可変計算ステップ入力

本機能はスイッチ時の解析のみでなく、一般に使用できます。従来から要望の多かったもので、これによりリスタートの手間は少なくなると思われます。
例えば、「直流ブラシレスサーボモータの解析 (スイッチ機能を使用)」の解析で、スイッチ切り替え後のステップ間隔を小さくしますと、Fig.7で示しました誘導起電力波形がFig.9のようになります。 スイッチ切り替え時の電圧ピークが鋭く高いものになります。ただし、この計算では、スイッチオフにより回路の抵抗が非常に高くなるとしておりますので、計算時間ステップを短くするほどピーク値は高くなります。 転流時に対してより詳細な回路モデルを入れないと、ピーク値自体はあまり意味は無いと思われます。
「運動と外部回路系を連成した電磁場解析」では、プランジャーの運動解析を行っていますが、壁に衝突したときの挙動を詳細に解析しますと、Fig.9のようになります。 一定ステップの解析でも十分な精度は出ていますが、可変ステップにすることにより、衝突時の運動がクリアに出ています。 上のように、状態が急変する前後で、計算時間ステップを短くしますと、詳細に状態変化を見ることができます。このとき、他の区間は比較的長い計算時間ステップで済み、計算時間の節減にもなります。このような急変時には誤差が出やすいため計算時間を短くすることは精度の向上に有効と思われます。 また、計算時間ステップが十分かどうかを検討する場合にも有効と思われます。


Fig.9 直流ブラッシュレスモーター誘導起電力

Fig.10 プランジャー可動子の運動


使用データ: pre_geom2D.neu, 2D_to_3D, input_circuit ステップ電圧 CIRCUIT解析, input_network ステップ電圧NETWORK解析
input_switch SWITCHによる解析, input_cycle 時間テーブルの繰り返し, input_break 可変時間ステップ

「直流ブラシレスサーボモータの解析 (スイッチ機能を使用)」において時間テーブルによる繰り返しによりステップ入力した場合の使用データ(CURCUIT使用): input_cycle_600rpm, pre_geom2D.neu, rotor_mesh2D.neu
定電流電源の時間周期テーブル入力には 定電流電源の電流周期変化入力例をご参照ください。


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