マルチポテンシャル法について
| | Jul 6, 2009 |
EMSolutionでは、解析領域をトータルポテンシャル領域と変形ポテンシャル領域に分け、変形ポテンシャル領域にある外部磁場ソース(EMSolutionではCOILと呼びます)を与え解析を容易にしています。この方法を2ポテンシャル法と呼んできました。ここでは、それをより拡張した方法について報告します。
2ポテンシャル法では、磁場ソースを表す電流源は変形ポテンシャル内か解析領域外に定義されれば良いため、メッシュとは独立に形状定義できます。従って、メッシュは電流源の形状にとらわれることなく、容易に分割することができます。メッシュと独立ですので、容易に位置を変更することができ、電流源の運動解析にも利用できます。この解析法では、変形ポテンシャル内では磁気ベクトルポテンシャルを磁場ソース(COIL)によるソースポテンシャルと、トータルポテンシャル内の磁性体磁化や導体渦電流によるものなどによる変形ポテンシャルを分離し、前者はビオ・サバール則の積分により、後者を有限要素法により計算します。コイル近傍の磁場はビオ・サバール則の積分でメッシュと独立に計算されますのでコイル近傍のメッシュは粗くてもあるいはメッシュ外にあっても精度が出せるのが一つの利点です。
本手法の問題点はICCG法が発散してしまう場合があることでしたが、正則化(Regularization)により解決しました(文献[28])。また、COILを含めた回路計算をする場合には別途計算されたインダクタンスを入力する必要がありましたが、それについてもEMSolution内部で計算することを可能にしました。
2ポテンシャル法を拡張したマルチポテンシャル法ではFig.1のようにトータルポテンシャル領域
によって分離された複数の変形ポテンシャル領域
において、それぞれ異なったポテンシャルを使用します。このことにより、スライド法において、固定部および可動部の両方において変形ポテンシャル領域を設けCOILを配置することが可能となりました。(従来はどちらか一方にしか配置することが出来ませんでした。)スライド法を使用しない場合には同様な計算を行うことはできましたが、変形ポテンシャル領域のビオ・サバール則の積分がそれぞれの領域に限ることができ計算時間が早くなります。特に、複雑なCOILを定義した場合には効果が大きいと考えられます。
Fig.1 マルチポテンシャル法の領域分割
解析例として、Fig.2のようなモデルを解析するとします。Cu Boxはモデル領域(1/8のみ)を表しています。COIL 2はCu Box内部にあり、他(COIL1、3)は、外部にあります。COIL 1、3は直列に接続され、交流電圧が印加されるとし、COIL 2に誘導される電流を求めます。解析は交流定常解析を行いました。Fig3、4にCu Box上の渦電流密度強度分布と空間磁束密度強度分布の解析結果を示します。Table Iで、従来の2ポテンシャル法と今のマルチポテンシャル法を比較します。解析結果には、有意な差はないと思われます。一方、解析時間はMatrix MakingとPost-processingのプロセスで時間が短縮されています。Matrix Makingでは、トータルと変形ポテンシャル領域の境界面での磁場積分、Post-processingでは空間磁場の計算で差が出たものと思われます。今の場合差は小さいものですが、COIL要素数に比例して計算量は増えますので、複雑なCOILを定義した場合は大きな差が出てくるものと思われます。なお、本方法とは直接関係ありませんが、THIN-ELEMオプションを使用しています。その結果、ICCG法の収束回数は823から401と減り、その計算時間は6割程度となっています。

Fig.2 解析モデル
|
|
| Fig.3 渦電流密度強度分布 | Fig.4 磁束密度強度分布 |
Table I. 計算結果と計算時間

Pentium 4, 2GHz
本報告では、本手法の妥当性を示しただけで、本手法が有効なスライド法を用いた場合の例を示しておりません。後日報告いたします。本手法はスライド法の場合を含め、すでにEMSolution r10.2.3で利用可能となっています。
使用法
(1)「16.1.1.体積要素特」のPOTENNTIALに変形ポテンシャル領域番号(1,2,・・・)を入力。従来は1のみでした。それぞれの変形ポテンシャル領域はトータルポテンシャル領域で分離されていて、接することは無いものとします。トータルポテンシャル領域は従来どおりPOTENTIAL=0です。
入力例
| * MAT_ID | * POTENTIAL | * B_H_CURVE_ID | * SIGMA | * MU | * PACKING | * ANISOTROPY | * IRON_LOSS * |
| 2 | 2 | 0 | 0.0 | 1.0 | | |
| * MAT_ID | * POTENTIAL | * B_H_CURVE_ID | * SIGMA | * MU | * PACKING | * ANISOTROPY | * IRON_LOSS * |
| 3 | 1 | 0 | 0.0 | 1.0 | | |
(2)「17.1.外部電流磁場ソース」のCOIL定義において、そのCOILの属する変形ポテンシャル番号を入力。デフォルト値は1です。異なる変形ポテンシャル領域の属する複数のCOILがCIRCUITやNETWORKで結合してはなりません。
入力例
| * COIL | * SERIES_NO | * TIME_ID | * NO_ELEMENTS | * MOTIN_ID | * IN_ROTOR | * POTENTIAL * |
| COIL | 1 | 0 | 3 | 0 | 0 | 1 |
使用データ:
input.ems, pre_geom.neu