NewFunction Index EMSolution HOME

半周期性を利用した鉄損算出   

Aug 19, 2010

 時間周期問題の定常解への高速収束簡易版時間周期法による誘導電動機の定常解析でも説明がありますように,一般に同期機は半周期性が成り立ち,誘導機の場合でもステータ,ロータ毎に半周期性が成り立つと考えられます。  
  そこで, ポスト処理による鉄損算出でも半周期性を利用して算出できるかを検討します。一周期性のある場合,渦電流損は半周期ごとにピークを持つ波形となります。鉄損を算出する場合の積層方向の渦電流損も同様に考えられ,半周期分を二倍して一周期分とするのと同等となると考えられます。一方,ヒステリシス損は磁束密度波形から算出する場合,下図のようにpeak to peak値を使用して最大のヒステリシス損ループを計算するため,一周期分のデータが必要となります。よってヒステリシス損を半周期で算出する方法として,Fig.1で半周期後に前半の周期が上下反転して後半の半周期が構成されているとした場合,前半周期を使用して後半周期のデータを作成すればよいと考えられます。  
 

 
 
 
Fig.1 ヒステリシス損での半周期性  
 
 一周期はN分割されており,最初のステップの値をB0,半周期目の値をBn/2とし,peak to peakの平均がゼロで半周期性が成り立っている場合(Fig.1青横線),半周期後のiステップ目はBi = -B n/2+i と表せます。直流重畳している場合も考慮して考えますと,半周期後の1ステップ目Bn/2+1は,B0とB1の差分を足すことにより得ることができ,順に足していくことにより後半周期を表現できます。  
 鉄損のように一周期をN分割して時間平均して計算する場合,時系列データはN個必要ですが,半周期性を利用するには半周期目のステップのデータも必要であるため,N/2+1のデータが必要となります。  
 なお,厳密には同期機の場合,ロータ側は一周期性で直流重畳されているので半周期性は成り立たず,駆動条件によってはその差が大きくなることが考えられます。そのため,同期機には厳密にはこの方法は適用できません。しかし鉄損自体の精度を考えますとそれ程気にする差ではないかもしれませんが,注意は必要であると思われます。以下に示す例題の二番目でIPMモータの鉄損算出に適用し,評価します。  
 
 例として,まずはポスト処理による鉄損算出に示す簡単なモデルで検証します(Fig.2)。算出法@は磁束密度の最大値から求める方法,算出法Aは磁束密度波形から求める方法を表しています。Table.1に一周期で算出した鉄損と前半周期を使用して後半周期を補間した鉄損を示します。入力が正弦波であるため半周期性が成り立っており,FEMによる面内方向渦電流損はもちろん,積層方向渦電流損も一致しています。同様の理由でヒステリシス損も一致しています。  
 
 
Fig.2 電気学会モデル


Table1 電気学会モデル 鉄損
   一周期 半周期 (前半周期使用)
算出法@ 算出法A 算出法@ 算出法A
面内方向渦電流損 (W) 0.957 0.957 0.957 0.957
積層方向渦電流損 (W) 0.403 0.483 0.403 0.483
ヒステリシス損 (W) 1.656 1.656 1.658 1.656
全損失 (W) 3.016 3.097 3.019 3.097

 次に,時間周期問題の定常解への高速収束でも使用した,IPMモータモデルに適用します(Fig.3)。ロータ側では厳密には半周期性は成り立ちませんが,その実用性を検証してみます。ここでは簡単のため二次元モデルでの電流源解析とし,最大トルク運転条件での鉄損を算出します。電磁鋼板は上記モデル同様50A1300とします。なお,二次元解析であるため磁石の渦電流損は考慮しないものとします。
  一周期で算出した鉄損と,半周期性を利用してその前半周期,後半周期を使用して算出した鉄損をTable.2に示します。これより,やや差は見られますが,どちらの半周期の結果も一周期のものと良い一致を示しています。同期機ではこの程度の差が出るものとして利用頂ければと思います。


Fig.3 IPM二次元モデル


Table2 IPMモータ 鉄損
   一周期 半周期
前半周期 後半周期
ロータ 積層方向渦電流損 (W) 379.97 379.97 379.99
ヒステリシス損 (W) 103.57 111.35 111.36
ステータ 積層方向渦電流損 (W) 2787.48 2787.48 2785.92
ヒステリシス損 (W) 5324.34 5324.28 5328.60
全損失 (W) 8595.36 8603.08 8605.87

  誘導機ではすべりがあるためステータは電源周波数で,ロータはすべり周波数で鉄損を計算するのが良いと考えられます。その場合,定格運転時のようにすべりが小さい場合,すべり周波数は電源周波数に比べて小さくなり,ロータの一周期分を計算するには多大なステップ数がかかってしまいます。しかし半周期性を利用すれば,その半分の周期で算出することができます。

 例として,かご型誘導機の二次元解析におけるロータバーとエンドリングの取り扱いで使用したモデルに適用します(Fig.4)。ギャップ部は180度を408メッシュ分割しており,1メッシュ1ステップで解析しているので,電源周波数は50Hzですべり0.25の場合,電源周波数での一周期は306ステップ,すべり周波数でのそれは1224ステップとなります。半周期性を利用すれば,それぞれ154ステップ,613ステップで済むことになり,計算時間を半分にできます。
 算出した鉄損をTable.3に示します。ヒステリシス損計算時にpeak to peakは一つのみとして判断されるため,電源周期でのロータのヒステリシス損,すべり周期でのステータのヒステリシス損は正しく計算されていませんが,参考までに()内に示します。先に述べたように,渦電流損はどちらの周期に関わらず時間平均するためほぼ同じ値となりますが,ヒステリシス損では違いが出てきていることがわかります。ロータ,ステータ別に比較すると半周期性を利用して算出した結果は一周期性でのそれと良く一致しています。


Fig.4 誘導電動機


Table3 誘導電動機 鉄損
   ステータ ロータ周期
一周期 前半周期 一周期 前半周期
ロータバー 渦電流損 (W) 37.04 37.08 37.01 37.01
ロータ 積層方向渦電流損 (W) 0.95 0.95 0.95 0.95
ヒステリシス損 (W) (0.55) (0.50) 0.95 0.95
ステータ 積層方向渦電流損 (W) 3.18 3.17 3.19 3.19
ヒステリシス損 (W) 6.91 6.88 (5.31) (7.44)
全鉄損 (W) (11.58) (11.49) (10.39) (12.52)

 これより,半周期性を利用して一周期の半分のステップ数で鉄損を算出できることが示せたと思います。上記例の誘導機ですべりが小さい場合や,PMモータをPWMインバータ波形で駆動する場合,一周期計算するのに必要な計算ステップ数は多大になってしまうため,半周期性の利用価値があると考えられますので,ご使用いただければと思います。

使用法
 基本的な設定である,鉄損計算用パラメータはポスト処理による鉄損算出と同様です。  
 AVERAGEオプションを-1とすると,半周期で鉄損を算出します。

入力例
* POST_DATA_FILE * ELEM_OUT * NODE_OUT * NUMBER_OUTPUT_MATS * AVERAGE * WIDE * SUF_OPTION *
5 1 1 0 -1 0 0



 STEP_INTERVALを一周期分Nステップ設定しますが,INITIAL_STEP,LAST_STEPには,半周期のステップN/2+1として設定します。  
 このとき,INITIAL_STEP,LAST_STEPは計算してあるステップ中であればどの範囲を指定しても構いません。

入力例
* INITIAL_STEP * LAST_STEP * STEP_INTERVAL * TIME_DIFFERENCE * RESTART_FILE_OPTION *
120 180 120 3 0




使用データ :
 IPMモータ :
  input_2D_40_5_static.ems : 初期値用静磁場解析
  input_2D_40_5.ems : 過渡解析
  inputPost_2D_40_5.ems : 鉄損計算用 一周期
  inputPostHalf_2D_40_5.ems : 鉄損計算用 半周期
  pre_geom2D.neuroter_mesh2D.neu : メッシュデータ
  誘導電動機 :
  inputNETWORK_Y_AC.ems : 初期値用交流定常解析
  inputNETWORK_Y_1125rpm.ems : 過渡解析
  inputPostNETWORK_Y_1125rpm.ems : 鉄損計算用 一周期*
  inputHalf_PostNETWORK_Y_1125rpm.ems : 鉄損計算用 半周期
  pre_geom2D.neuroter_mesh2D.neu : メッシュデータ
  * ロータ周期計算用はコメントアウトしてあります。


NewFunction Index