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外部電流磁場ソース(COIL)におけるインダクタンスの取り扱い

外部電流磁場ソース(COIL)を用いて計算するときには、ソース磁場自体は変形ポテンシャル領域では解析されません。ソースの磁気エネルギーは変形ポテンシャル領域では含まれず、インダクタンスもその分だけ差し引かれたものとして計算されます。定電流源で磁場や渦電流を解析するときには、ソースのインダクタンスは関係ありませんので、これで充分なのですが、ソースが定電圧源に接続され、電流自体が未知数になる場合には、回路計算が連立され、インダクタンスが関係します。このために、外部インダクタンスとして、空芯のソースインダクタンスを入力するものとしていますが、その取り扱いは若干複雑で、お困りのお客様がおられるかと思います。ここでは、実例を通じてその取り扱いを説明したいと思います。

1. ELMCUR静磁場解析によるインダクタンスの計算
説明のためのモデルとして、Fig.1のような2次元軸対称モデルを考えます。領域①、②はコイル領域で、③、④は空気領域です(pre_geom2D.neu)。
先ず、1、2領域にELMCURを入力し、コイルのインダクタンスを計算します。コイルは、それぞれ1000ターンとし、コイル1に1A,コイル2に0Aの電流を流し、鎖交磁束よりコイルの自己および相互インダクタンスを求めます(input.1)。


Fig.1 テストモデル

コイル定義は次のように行います。コイル電流は電流密度で与え、1000AT(電源に1A流したときの電流量、すなわちターン数)に対する4kA/m2を与えています。

* ELMCUR* SERIES_NO* NO_MAT_IDS* CURRENT_OP* IN_ROTOR *
ELMCUR 1 1 1
* ELMCUR* SERIES_NO* NO_MAT_IDS* CURRENT_OP* IN_ROTOR *
ELMCUR 111
* MAT_ID* IN_SURFACE* OUT_SURFACE* CURRENT* SIGMA *
1124.e30.0e7
* ELMCUR* SERIES_NO* NO_MAT_IDS* CURRENT_OP* IN_ROTOR *
ELMCUR 211
* MAT_ID* IN_SURFACE* OUT_SURFACE* CURRENT* SIGMA *
2124.e30.0e7

回路系定義は次のように行います。解析は1度分としていますので、REGION_FACTOR=360.としています。これにより、回路計算は全周分として行います。外部インダクタンス、抵抗は全てゼロとします。コイル1に電源1、コイル2に電源2を接続し、定電流源とします。電流値は電源1を1A、電源2を0A一定とします。TYPE=0は定電流源を表します。TIME_ID=1はその電流変化をID番号1で入力することを表し、TIME_ID=0は電流0を表します。

* CIRCUIT *
 CIRCUIT
* NO_SERIES * NO_POWER_SUPPLIES * REGION_FACTOR * IN_IND * IN_RES * IN_CON *
    2           2            360.
* SERIES_IDS *
   1  2
* SERIES_EXTERNAL_INDUCTANCE *
     0.0
     0.0  0.0
* SERIES_EXTERNAL_RESISTANCE *
     0.0
     0.0  0.0
* CONNECTION_MATRIX *
     1.0  0.0
     0.0  1.0
* PS_ID * TYPE * TIME_ID * INITIAL_CURRENT *
   1    0      1         0.0
   2    0      0         0.0
* END of CIRCUIT
    END

計算を実行しますと、output.1に次の磁束量が出力されます。磁束量は1000ターン、360度分となっており、ID No.1の値がコイル自己インダクタンス、ID No.2の値が相互インダクタンスとなっています。

**** Sources *************************************************************
  ID No.Amplitude(Current)VoltageFlux
  11.00000e+0000.00000e+0001.26862e+000
  20.00000e+0000.00000e+0002.44741e-001

2. ELMCURを用いた交流解析
ELMCURを用いた同モデルで交流定常解析を行います(input.2)。領域③は磁性体で非透磁率1000とし、コイル1には最大値1Aの交流電流を流します。コイルには定電圧電源が繋がれており、その電圧はゼロとします。すなわち、短絡状態にあるとします。コイル抵抗はゼロとし、完全導体状態にあるとし、周波数は100Hzとしますと回路系電源の定義は次のようになります。TYPE=1は定電圧電源を表します。

* PS_ID* TYPE* TIME_ID* INITIAL_CURRENT *
1010.0
2100.0

解析結果の、output.2には次のように出力されます。STEP1は位相-90度、STEP2は位相0度を表し、それぞれ、虚数部、実数部に相当します。完全導体状態としたため、位相ゼロだけに電流が流れ、コイル2には短絡状態としたため、鎖交磁束がゼロになるように逆方向の電流が流れます。コイル1に1A流すには、90度進んだ電圧1496Vが必要なことが解ります。コイル1から見たインピーダンスは、jwL=1.49649e+003jであり、1.49649e+003/(2p*100)=2.3817378(H)となり、(1)で求めたものとは異なります。これは領域③を磁性体にしたことと、コイル2を短絡状態にしたことに寄ります。Fig.2に位相0での磁束密度分布を示します。磁束量は1度分の磁束量で表されています。

Step No.1   Time -2.500e-003 sec
**** Sources *****************************************************************
ID No.Amplitude(Current)VoltageFlux
16.12303e-0171.49649e+0031.45834e-016
2-3.09262e-017-5.81160e-009-5.66348e-028
Step No.2   Time 0.000e+000 sec
**** Sources *****************************************************************
ID No.Amplitude(Current)VoltageFlux
11.00000e+0000.00000e+0002.38174e+000
2-5.05080e-0010.00000e+000-9.24953e-012


Fig.2 位相ゼロにおける磁束分布

3. 外部電流磁場ソースを用いた交流解析
2と同じ状態をCOILを用いて計算します(input.3)。まず、物性定義を次のように変更します。すなわち、領域①、②、④を変形ポテンシャル領域(POTENTIAL=1)にします。

* NO_MAT_IDS * EXTEND_TOTAL * NO_SMAT_IDS
     4            0            0
* MAT_ID * POTENTIAL * B_H_CURVE_ID * SIGMA * MU * PACKING *
    1        1          0           0.0    1.0       
    2        1          0           0.0    1.0       
    3        0          0           0.0    1000.0      
    4        1          0           0.0    1.0       

コイル定義は以下のようになります。ここではLOOP(軸対称矩形断面コイル)を用いて定義しています。全領域分を定義指定いることに注意してください。

* COIL * SERIES_NO * TIME_ID * NO_ELEMENTS * MOTIN_ID * IN_ROTOR *
  COIL     1          0         1
* LOOP * CURRENT(A) * RADIUS(m) * CENTER_Z(m) * RADIAL_W(m) * AXIAL_W(m) *
  LOOP     1000.        0.75         0.5            0.5         0.5
* END of COIL *
     END
* COIL * SERIES_NO * TIME_ID * NO_ELEMENTS * MOTIN_ID * IN_ROTOR *
  COIL     2         0          1
* LOOP * CURRENT(A) * RADIUS(m) * CENTER_Z(m) * RADIAL_W(m) * AXIAL_W(m) *
  LOOP     1000.        0.75        -0.5            0.5         0.5
* END of COIL *
    END

回路系の定義は以下のようになります。外部インダクタンスとして、1で求めた空芯の自己および相互インダクタンスとして対称行列の形式で入力します。他は、変更ありません。

* CIRCUIT *
 CIRCUIT
* NO_SERIES * NO_POWER_SUPPLIES * REGION_FACTOR * IN_IND * IN_RES * IN_CON *
     2             2                360.
* SERIES_IDS *
   1   2
* SERIES_EXTERNAL_INDUCTANCE *
      1.26862e+000
      2.44741e-001 1.26862e+000
* SERIES_EXTERNAL_RESISTANCE *
      0.0
      0.0 0.0
* CONNECTION_MATRIX *
      1.0 0.0
      0.0 1.0
* PS_ID * TYPE * TIME_ID * INITIAL_CURRENT *
   1     0       1        0.0
   2     1       0        0.0
* END of CIRCUIT
     END

結果(output.3)は下記に示しますが、2の結果と0.01%程度の差で一致しています。

Step No.1   Time -2.500e-003 sec
**** Sources *****************************************************************
ID No.Amplitude(Current)VoltageFlux
16.12303e-0171.49701e+0031.45885e-016
2-3.09469e-0175.36612e-0075.22934e-026
Step No.2   Time 0.000e+000 sec
**** Sources *****************************************************************
ID No.Amplitude(Current)VoltageFlux
11.00000e+0000.00000e+0002.38257e+000
2-5.05418e-0010.00000e+0008.54045e-010

4. NETWORKを用いた解析
EMSolutionでは、回路系の入力方法を2種類ご用意しています。ひとつは、これまでに使用したCIRCUIT形式であり、他は、ここで説明するNETWORK形式です。CIRCUIT形式は、インダクタンス、抵抗、CONNECTION行列を入力する必要があり、ここでの簡単な結線の場合には問題はありませんが、やや直感に欠けるものになっています。これに対して、NETWORK形式は回路要素を結線してゆく感覚で入力でき、解りやすいものとなっています。また、NETWORK形式ではコンデンサや非線形回路要素も入力できるようになっています。
3と等価なNETWORK形式での入力は次のようになります(input.4)。FEMは有限要素領域の要素を表しており、今の場合、コイル①、②に相当します。外部インダクタンスはLおよびMにより入力します。また、定電流電源をCPS、定電圧電源をVPSで定義し、これらを回路ノードで結合します。Fig.3にブロック図として表します。

* NETWORK * REGION_FACTOR *
  NETWORK      360.
* FEM * ID * NODE1 * NODE2 * SERIED_ID *
  FEM   1    1      2        1
* L * ID * NODE1 * NODE2 * INDUCTANCE *
  L   2     2      3     1.26862e+000
* CPS * ID * NODE1 * NODE2 * TIME_ID *
  CPS   3     3       1      1
* FEM * ID * NODE1 * NODE2 * SERIED_ID *
  FEM   11    11      12       2
* L * ID * NODE1 * NODE2 * INDUCTANCE *
  L   12    12      13     1.26862e+000
* VPS * ID * NODE1 * NODE2 * TIME_ID *
  VPS  13    13      11       0
* M * ID * NODE1 * NODE2 * MUTUAL_INDUCTANCE *
  M   21     2       12        2.44741e-001
* END *
  END

Fig.3 NETWORK結線ブロック図

output.4 の結果は、内容的には全く3と変わりませんが、形式が異なります。各回路要素に対して電流、電圧、磁束量が出力され、磁束量はFEMとL要素のみに対して出力されます。各量は方向を持ち、今の場合、Fig.3での矢印の方向です。電圧は各要素の発生電圧を表し、電圧降下や逆起電力は負値で表されます。閉じた回路ではトータルがゼロとなります。COILを用いた場合、インダクタンスは外部インダクタンスとして入力しますが、それぞれの電圧、磁束量は分離して出力されます。例えば、今の例では、ID No.1、2がコイル①に相当しますが、3では二つの値を加えあわせたものとして出力されています。FEM要素のみの値は、トータルポテンシャル領域からの誘導分であり、COIL間の誘導分が除かれたものとなっています。

Step No.1   Time -2.500e-003 sec
**** Network elements  *****************************************************************
ID No.Current VoltageFlux
16.12303e-017-7.77636e+0027.57814e-017
26.12303e-017-7.19375e+0027.01039e-017
3 6.12303e-0171.49701e+003
11 -3.09469e-017-2.49092e+0022.42743e-017
12-3.09469e-0172.49092e+002-2.42743e-017
13-3.09469e-0170.00000e+000
Step No.2   Time 0.000e+000 sec
**** Network elements  *****************************************************************
ID No.Current VoltageFlux
11.00000e+0000.00000e+0001.23765e+000
21.00000e+0000.00000e+0001.14492e+000
3 1.00000e+0000.00000e+000
11 -5.05418e-0010.00000e+0003.96442e-001
12-5.05418e-0010.00000e+000-3.96442e-001
13-5.05418e-0010.00000e+000

まとめ
ここでは、ELMCURを使用して静磁場解析を行い、コイル間インダクタンスを求め、それを外部インダクタンスとしてCOILを使用した計算について紹介しました。交流定常解析について述べましたが、過渡解析においても全く方法は同じです。ELMCURとCOILを用いて等価な計算を行い、よく一致した結果が得られました。このことは、両手法の妥当性を示すものと考えられます。また、CIRCUITとNETWORKの二つの入力方法について紹介しましたが、NETWORK形式が解りやすいものになっていることが了解していただけるかと思います。実際の解析においては、ELMCUR等でインダクタンスを計算することは手間がかかり、COILのメリットが小さくなることが考えられます。このため、将来的には、インダクタンス計算をEMSolution内部で行うことを予定しています。


←r9.8.6(2006/8/29)の新機能43. COIL(外部電流磁場ソース)のインダクタンス計算でEMSolution内部でCOILのインダクタンスが計算できるようになりました。
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